汀間
ていま

村を守るハードとソフト

亜熱帯気候に属し、文化的には中国の影響を強く受けた沖縄では、本土とは異なる村づくりが見られます。家を雨風から守る屋敷林や、邪気を払う石敢當(いしがんとう)など、ハードとソフトの両面で村を守っているのです。

【1】村の入口に鎮座するのは邪気を払う石敢當。汀間の石敢當には、中国から伝わったままの姿で「泰山石敢當」と刻まれています。
【2】屋敷地にはフクギを植え、照りつける日差しや台風の大風から家を守りました。
【3】沖縄の集落には拝所(うがんじゅ)があります。拝所には神が寄りつくと考えられ、うっそうとした緑に覆われています。

汀間は名護市の東海岸、大浦湾に臨む集落。テマダ川と汀間川の間の沖積平原にあり、河口の汀(みぎわ)に位置することが地名の由来となりました。集落の成立は17世紀後半、近隣からの移住によると伝わり、道路は碁盤目状に引かれています。


汀間集落の景観

御願小は老朽化のため2003年に改築された

集落には複数の拝所があります。このうち集落の東の入口にある御願小(うがみぐぁー)は規模が大きく、戦後になって村内の神々が合祀されたものです。このあたりは集落の中心になっていて、拝所前の広場に地区会館(公民館)や共同売店が建っています。

広場の西にはフクギの屋敷林に覆われた路地が延び、その入口には高さ1.3〜1.4メートルほどの石敢當が置かれています。石敢當は風水思想とともに中国から沖縄に伝わった、邪気を払うとされる石造物。通常、集落の入口や辻、住宅の門口に置かれますが、これほど大きなものは珍しいのではないでしょうか。
汀間の石敢當には「泰山(たいざん)石敢當」と書かれています。泰山は中国の中心的な聖山で、こうした表記はより古い形式。琉球国時代には王家の尚(しょう)氏への配慮から、次第に「泰山」の2字が省略されるようになったといわれています。


画像が不鮮明で恐縮だが、「石」の字の上に「泰山」と刻されている


屋敷林と古民家のある汀間の町角

拝所や石敢當が、目には見えない結界を張って集落を守っているのだとすれば、実質的に村の家々を守っているのがフクギの屋敷林。それぞれの屋敷に濃密な森を形成し、強烈な日差しや台風の雨風をさえぎります。汀間ではとりわけ西部から南部にかけて屋敷林が良好に残されています。民家は多くがコンクリート造りで建て直されていますが、部分的に残された赤瓦の家が、フクギの植栽と調和した集落景観をつくり出しています。


古い琉球瓦をいただく家も残る

汀間川を挟んで集落の対岸にも拝所がある


【住所】沖縄県名護市汀間
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(47)沖縄県』角川書店、1986年

2014年7月6日撮


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