おく

新しい屋根、古い雨端

沖縄島最北の集落、奥。赤瓦よりもセメント瓦が目立ちましたが、雨端(あまはじ)柱を見ると、切り出した丸木をそのまま使っているではありませんか! 瓦をセメントとしている家にも、琉球の伝統は息づいているのですね。

【1】国頭村といえば新建材のセメント瓦。詳しくは「奥間」のページをご参照ください。
【2】屋根は新建材でも、家の構造は昔のまま。雨端柱も切り出した木をそのまま使っています。
【3】奥間といえば「左一番座」の家が卓越していることも特徴。このお宅も、向かって右に玄関があるので、おそらく左一番座でしょう。

奥集落で特筆すべきものに、セメント瓦と左一番座があります。瓦は「奥間」のページで紹介したので、ここでは左一番座についてご説明しましょう。


奥集落全景。セメント瓦の家並み

参考写真/銘苅家住宅の右一番座

沖縄の家で最も格の高い部屋が「一番座」です。本土の座敷に相当し、玄関土間(下手)とは反対側の上手に配されます。一番座の位置に関しては、向かって右側に置く「右一番座」が圧倒的に多いことが知られています。沖縄の家はふつう南面して建てられますが、その場合、風水の東方尊重にしたがうと、向かって右側(すなわち東)に一番座を置くことになります。夏に東風を取り込み、過ごしやすい空間とする意図もあったようです。
左写真は伊是名(いぜな)島の重要文化財、銘苅(めかる)家住宅の例。右の部屋が一番座です。

ところが奥には「左一番座」が多く、『沖縄の集落景観』(坂本磐雄著)によれば、集落全体の47.4パーセントにものぼります。これは同書で報告されている中では沖縄島で最多です。
「左一番座」を取る理由はさまざまですが、ひとつには敷地の左側に拝所(うがんじゅ)があり、それに近い側を上手と見なすケースがあります。


この家はおそらく左一番座だろう


奥の家並み。このあたりは右一番座が多い様子

奥で多いのは、敷地の右側に排水溝があるケース。排水溝は下手ですから、必然的に左一番座としているのです。奥集落で一般公開されている家はありませんが、玄関の位置を見れば、一番座が左右どちらにあるのかが推測できます。向かって右側に玄関があれば、その家は左一番座というわけです。


人間大のシーサーがお出迎え

セメント瓦の鬼瓦


【住所】沖縄県国頭郡国頭村奥
【公開施設】なし
【参考資料】
『沖縄の集落景観』坂本磐雄著、九州大学出版会、1992年

2014年7月6日撮


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