儀間
ぎ ま

大きな木の下で

久米島中南部の儀間は、長方形の街区に2〜3の家が並ぶ典型的な琉球の集落です。屋敷林の緑が濃く、台風にそなえた町づくりが見て取れます。

【1】路地裏のコバテイシは熱帯性の高木。儀間ではこうした巨樹が辻に植えられ、古き沖縄の景観をつくりあげています。
【2】儀間に限ったことではないのですが、久米島では敷地の間仕切りにサンゴ石垣を設ける例は少なく、生垣が採用されています。
【3】敷地内に赤瓦の民家が建てられています。

久米島は沖縄諸島の最も西にあり、琉球と大陸を行き交う船が寄港しました。15〜16世紀の明や朝鮮の歴史書にも「九米島」「古米島」「姑米島」という記述があり、島の重要性を物語っています。港のひとつが開かれたのが儀間で、道光22(1842)年から咸豊2(1852)年までの11年間に、異国船が9回も上陸したという記録が残されています。

久米島といえば織物の久米島紬(つむぎ)が特産で、首里の王府への献納品にもなっていました。そうした品の数々も、儀間で積み込まれたのかもしれませんね。

現在の儀間には賑わいだ過去の面影はなく、のどかな島の風景を見せています。集落の最大の特徴といえるのがフクギの屋敷林。風除けに効果のあるフクギは、かつて沖縄のほとんどの集落で植えられていましたが、終戦後、米軍による土地接収の影響もあって各地で失われました。しかし、離島では比較的良好に残されていて、久米島では儀間や真謝が代表的な集落として知られています。


志良堂蔵のコバテイシ。根元に力石らしき石が置かれている

辻に巨樹を植えるのも、沖縄の伝統的な植栽です。姿のいい巨樹は地域の目印となり、人々の集まる集会場として機能しました。いまとなってはそんな用途はないでしょうが、儀間郵便局前のガジュマルや志良堂蔵(しらどうぐら)のコバテイシは、「これぞ沖縄」といった雰囲気をかもし出しています。


儀間郵便局前のガジュマル。こちらも根元に力石がある
沖縄にはフクギ屋敷林の集落は数あれど、辻の巨樹や赤瓦の家並みが一体化した景観を見せる場所はそれほどないと思います。この何気ない沖縄らしさを、いつまでも大切にしてほしいと思いました。


【住所】沖縄県島尻郡久米島町儀間
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(47)沖縄県』角川書店、1986年
『ジュニア版 琉球・沖縄史』新城俊昭著、編集工房東洋企画、2008年

2014年7月3日撮


戻る