里麓
さとふもと

魂の玉石垣

里麓は上甑(かみこしき)島の北東部にあるかつての武家町。南北に走る中町馬場には玉石垣が連なり、古い町並みをよく残しています。

【1】大きめの玉石を組んだ石垣は、高さ1メートルほどになります。石はジグザグに重ねた矢筈(やはず)積みです。
【2】石垣の隅部は四角い石を算木積みとし、崩れにくくしています。
【3】武家門がなく、寄棟造りの家が多いため、沖縄の集落を連想させます。

鹿児島藩は薩摩国、大隅国、それに日向国の南部を領した広大な藩で、領内にまんべんなく武士を分散して住まわせていました。その対象は離島にまでおよび、甑島列島にも里麓、手打麓という2つの武家町がつくられました。
里麓の町並み

矢筈積みの石垣

里麓は上甑島の武家町で、町の北西にはこの地を治めた地頭の屋敷(仮屋)がありました。仮屋跡は現在小学校で、隣に八幡神社があり、その前からおよそ230メートルの中町馬場が南へ延びています。この中町馬場が里麓のメインストリート。道の両側には、玉石垣で守られた武家屋敷が連なっています。


八幡神社にも見事な玉石垣がある
県内の武家町では、石垣とともに武家門も比較的残されていますが、里麓には現存していません。もともとつくられなかったのか、後代に撤去されたのかは不明です。

また、住宅はほとんどが平屋の寄棟造りですが、一部、棟まわりを入母屋風に造作したものも見られます(左写真手前)。他地域ではあまり見かけないつくりですが、この由緒もよく分かりません。

ところで上甑島の里地区では、麓集落以外にも玉石垣の連なる風景を見ることができます。玉石は島の海岸で拾ったもので、強風の島にあって家を守る役目もあったようです。過酷な環境に暮らす人々の思いがこもった石垣は「魂の石垣」と呼ばれ、国土交通省が全国の離島から選んだ「島の宝100選」にも選ばれました。(選定名は「玉石の石垣が残る「たましいの島」」)
里港近くの石垣の道


【住所】鹿児島県薩摩川内市里町里字村西(地図
【公開施設】なし

2015年5月8日撮


戻る