上畑
うわはた

母なる傾山のふところ

上畑は大村、中村、上畑の3集落の総称で、豊後大野市の最奥にある集落のひとつです。傾山(かたむきやま)を望む高所に、棚田と瓦屋根の古民家が点在しています。

【1】集落の向こうに傾山系の山並みがそびえます。主峰、傾山はこの写真のフレーム外、右側にあります。
【2】上畑では集落の内外に棚田がつくられています。しかし現在はすべてが放棄されていると聞きました。
【3】主屋は入母屋造りで、大きめの付属屋をしたがえます。椎葉村(宮崎県)の伝統民家を思わせる形態でした。

九州中央部には標高1500メートルを超す急峻な山並みが折り重なり、それぞれの間を流れる谷筋には集落が形成されています。そのひとつ、傾山(1605メートル)の麓を流れる奥岳川の最奥にあるのが上畑集落です。


狭い谷に建物を並べる(大村)


山裾に主屋と付属屋を並べた家(中村)

上畑には標高の低いほうから順に大村、中村、上畑と3つの集落があります。いずれも平坦な場所はほとんどなく、民家は石垣を組んで整地した場所に巧みに配されています。

主屋は平屋もしくはツシ2階建てで、入母屋造り。大きな付属屋もそなえていますが、主屋と付属屋をL字型に配する家や、横に並べた家などがあり、それぞれ限られた土地を有効活用しようとする意図が読み取れます。


左の家を俯瞰したところ(大村)


主屋(右)と付属屋(左)を直交させる(大村)

3層構造の付属屋(大村)

付属屋には懸造り(かけづくり)として最下層を半地下にするものが多く、今回の旅では同じ豊後大野市の木野台地や、宮崎県の上岩戸でも目にしました。
左の建物は半地下部分を合わせ3層構造にもなりますが、山奥でこれほどの高層建築に出合えるとは思ってもいませんでした。


大棟がゆがんでいる(上畑)
平坦地のない上畑では棚田が開かれました。棚田は集落内のみならず、少し離れた山中にもあるといいます。今回、参考にした『日本の文化的景観』には九折(つづら)の地名が紹介されていましたが、現地で聞けば民家は1軒しかなく、放棄された棚田があるばかりとのことだったので、訪問しませんでした。


集落内の棚田。正面に傾山を見る(中村)


せいがい造りとした家(大村)


道路には緊急用のヘリポートがある(中村)


【住所】大分県豊後大野市緒方町上畑(地図
【公開施設】なし
【参考資料】
『日本の文化的景観』文化庁文化財部記念物課監修、同成社、2005年

2015年5月6日撮影


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