杵築
きつき

石段にも武家町の工夫

杵築は谷筋の町人町を挟むように、北台と南台の武家屋敷地がある独特の町。自然、坂道の多い町になりましたが、道の設計には武家町ならではの工夫が見られます。

【1】谷底は町人町。かつて歴史的建造物が並んでいましたが、道路拡張によって多くは建て直されました。一部、曳き家保存された家もありますが、このお宅はどちらなのか未確認です。
【2】高台は武家町。火災が頻発した町人町でいち早く瓦屋根が奨励されたのに対し、武家町は最後まで茅葺きのままでした。
【3】町人町と武家町を結ぶ「酢屋の坂」。1段あたりの段差はわずか3センチ、踏面の長さは133センチもあります。これは騎馬による昇降を考慮したためで、石段というよりほとんど坂道といった感じです。

北台と南台、2つの武家町が谷間の町人町を挟む独特の町並みを呈することから、杵築は「日本で唯一のサンドイッチ型城下町」を名乗り、観光PRしています。この地形ゆえ町の至るところに石段が引かれ、町並みにアクセントを加えています。


飴屋の坂。途中に武家門がある


53段の大階段、勘定場の坂

杵築の石段で最も見事なのが、北台の家老丁通りから東に向かい、城の前に下りる「勘定場の坂」。幅4.1メートル、全長65メートル、段数53段の大規模なもので、踏面は坂下に向けわずかに傾斜させ、駕籠による昇降がしやすいようになっています。


勘定場の坂。富士山模様の石が名物
勘定場の坂に次ぐのが「酢屋の坂」。北台から町人町へ下りる石段で、段差が3センチしかなく、騎馬による昇降に配慮したものといわれています。
「酢屋の坂」に向き合い、南台から町人町へ下りる「志保屋(塩屋)の坂」は、1967(昭和42)年にアスファルトの坂道に舗装されましたが、最近になって石段道が復元されました。


酢屋の坂。騎馬での昇降に配慮した緩傾斜の石段


北台の家老丁通り。長屋門が現存

武家町は北台の家老丁通りと南台の裏丁通りによく保存され、屋敷の土塀が続いています。とくに北台には「勘定場の坂」と「酢屋の坂」があって車がほとんど入り込めず、公開施設の大原邸、磯矢邸もあり、ゆったり散策できる町並みとなっています。

南台にも石垣や土塀、武家門、武家屋敷などが現存し、良好な町並みが残されています。町並みの最も西にはカトリック教会があるのですが、かつての武家屋敷地に建っているようで、武家門が残されていました。


南台の裏丁通り


南台の杵築カトリック教会


石垣の残る町角もある。南台の外れの旧安藤家住宅


【住所】大分県杵築市大字杵築、大字南杵築(地図
【公開施設】大原邸、磯矢邸、中根邸、一松(ひとつまつ)邸、佐野家
【参考資料】
『杵築伝統的建造物群保存対策調査報告書』杵築市教育委員会、1981年

2009年12月26日撮影


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