城原
きばる

水音響く旅館街

竹田市街から車で10分。田園地帯に突如姿を現す城原神社の周辺に、古い旅館街が形成されています。

【1】2階の手すりと大きな窓。紛れもなく旅館建築です。聞けば、ここは古い街道ではあるものの、宿場町ではなかったとのことでした。
【2】背後の緑は城原神社の社叢です。門前の旅館街だったのでしょうか。
【3】この水路は江戸時代に引かれたもので、竹田市街まで続き、両側の田園地帯を潤しています。


城原神社

城原はいまでこそ竹田市の一地名にすぎませんが、古くは『日本書紀』に登場する由緒ある地名。そんな歴史を語るように、ここには応神天皇2(271)年に創建されたと伝わる城原神社が鎮座しています。旧小国街道沿いに立派な楼門を建てており、この神社より北に古い町並みが見られます。

城原の町並みの特徴は旅館建築です。とはいえ、もはや2軒しか残されていませんが、城原神社の向かいに建つ1軒は、入母屋屋根で1階には格子をはめた格調高いたたずまい。もう1軒、「丸尾食堂」の看板を掲げた旅館も、小ぶりながら2階にガラス窓を入れた見事な建築物でした。


左の旅館建築を見上げる


城原神社の向かいの旅館

丸尾食堂の旅館

「丸尾食堂」の方にお話を聞けたのですが、当地は参勤交代道だったわけでもなく、旅館が整備されたのは近代に入ってからだそうで、主な宿泊客は土地改良や電気工事などを行った技術者や作業員だったそうです。それにしては立派な旅館が2軒も残っていたのは不思議です。あるいはかつては、門前町として賑わったのかもしれません。


城原の古民家


城原の古民家

城原では旧小国街道に沿って水路が流れています。見たところ、秒速2メートルほどの急流で、幅も1メートルはある大規模なものです。これは寛文2〜3(1662〜63)年に開かれた城原井路。久住(くじゅう)川から取水し、末端は竹田駅まで届いています。この井路の開発を期に周囲で棚田の開発が行われ、現在でも農業用水として利用されているのだそうです。


城原の棚田風景


【住所】大分県竹田市米納、城原(地図
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典』角川書店、1980年

2015年5月6日撮影


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