安心院
あじむ

受け継がれる鏝絵の伝統

安心院は鏝絵(こてえ)の町として知られ、町内に江戸・明治期の作品が点在しています。平成に入り、現代の作家による「新鏝絵」もつくられるようになりました。

【1】古い商家や造り酒屋が点在する安心院の中心部の本町通り。
【2】ここに「富士山」の鏝絵があります。1884(明治17)年につくられました。
【3】ここにあるのが「毘沙門天・弁財天・布袋」。2004年に完成した「平成の新鏝絵」です。

大分県は古くからすぐれた左官職人を輩出した土地で、彼らが残した鏝絵の集積地として知られています。中でも旧安心院町(合併により現在は宇佐市)には約70点の歴史的な鏝絵が現存し、「鏝絵の町」として観光PRを行っています。


本町通りの町並み


妻壁に鏝絵がある。明治20年代

鏝絵とは、しっくいでつくったレリーフ装飾のこと。安心院の鏝絵はしっくいに顔料を混ぜ込んでいるため、屋外に飾っても色落ちすることがありません。これが、古い鏝絵がたくさん残された理由です。鏝絵は雨戸袋などに施されることが多く、家が解体されても鏝絵のみを切り取って保存するケースが見られます。


移設保存された鏝絵。明治時代
鏝絵の伝統は現在も受け継がれており、町内には現代の作家が手がけた「平成の新鏝絵」もたくさん見られます。造り酒屋、床屋、印刷屋など、それぞれの業態を表すモチーフを雨戸袋などに飾り、各家には作品名と製作年、作者名を記した案内板まで設置されていました。
理髪店の鏝絵。2004年、江藤智子氏

農機具販売店の鏝絵。2004年、石田覚蔵氏

うれしいのは、現代の作家のほとんどが、旧安心院町や宇佐市の出身者であること。当地の鏝絵技術はこれからも安泰のようですね。
※安心院の鏝絵は町内全域に散在しています。今回は折敷田(おしきだ)、下毛(しもげ)の本町通り周辺のみ散策しました。


【住所】大分県宇佐市安心院町折敷田、安心院町下毛ほか(地図
【公開施設】なし

2015年5月5日撮


戻る