山江村
やまえむら
そこに石はあるか
日本建築において石は、礎石や石垣など脇役的に用いるのが一般的ですが、山江村では柱や壁を石でつくった建築が見られます。かつては石造の主屋もあったらしいのですが、今回の旅では見つけられませんでした。 |
【1】高層部に格子窓を入れた付属屋。熊本県南部に典型的な形態です。 |
熊本県南部の人吉・球磨地方は古来、良質な石材(凝灰岩)の産地として知られていました。古くは石臼などの民具や建物の石垣などに使われ、明治時代になって西洋の建築技術が普及すると建材にもなりました。 | 山江村の景観(寺の下集落) |
山江倉庫2号(甲集落) |
人吉・球磨地方の中でも、観光資源として石倉に着目しているのが山江村で、村内の至るところに案内図や解説板が設置されています。最も壮観な石倉が、農協所有の通称「山江倉庫2号」。1941(昭和16)年に建てられた米穀保管用の倉で、平面は18.6メートル×9.5メートルもあります。 |
この地方で石倉が多く建てられたのは、そもそも石材が豊富だったからなのですが、吸湿性にすぐれる凝灰岩が、米穀の保管庫の建材に適していることも一因でした。この「山江倉庫2号」は現役の倉庫ですが、人吉・球磨地方には文化施設などに転用された石倉も見られます。 | 同じ球磨郡の多良木町にある「交流館石倉」 |
農家の屋敷構え(乙集落) |
人吉・球磨地方では各農家も小型の石倉を建てました。切石を積み重ねた切妻屋根の倉で、妻の上部には屋号をあしらった装飾が入れられています。 |
妻壁に家名の頭文字などを入れている(乙集落) |
傾斜地に建つ大規模な付属屋(下払集落) |
また、低層部を石材で、高層部を木材で建てた中型の付属屋も散見されます。あるいは、馬小屋を兼ねた建物かもしれません。 | 石と木を組み合わせている(乙集落) |
トップ写真の小屋。石の柱と木の梁の接合部(番慶集落) |
ちなみに、山江村には石造住居があるとの情報を得て訪問したのですが、歴史民俗資料館で聞いても詳細は分かりませんでした。その代わり、石の柱をもつ付属屋がわずかに見られました。下写真は神社の手水舎(てみずや)を思わせる独特の構造ですね。井戸かと思いましたが、物置として使われていました。 |
石柱をもつ付属屋(下払集落) |
2015年5月9日撮影 |