上原
うわばる
七夕綱と鍵屋造り
球磨川沿いの深い山中にある上原は、周囲を田んぼに囲まれたのどかな農村です。ここは八代・芦北地方の伝統行事、七夕綱を継承する5集落のうちのひとつです。 |
【1】七夕綱は去り行く夏の風物詩です。 |
八代・芦北地方には、七夕の伝統行事として七夕綱を張る集落が5つあります。いずれも観光PRされていない素朴なものですが、綱に吊るす飾りは年々派手になっているようで、人物や文字をかたどったものも見られました。しかし上原の七夕綱だけは、草履やあしなか(短い草履)など、伝統的な生活用具で構成されています。 | 上原の七夕綱 |
上原の古民家 |
七夕綱は旧暦の七夕祭りの名残りで、お盆の行事とも一体化しており、「綱を渡って先祖の霊が帰ってくる」ともいわれています。その綱になぜ生活用具を吊るすのでしょうか。地区の人に聞いても分かりませんでしたが、「ほかの集落では自転車のような凝った飾りを吊るすけど、あれは中に針金を仕込んでいるんだよね。上原は全部、昔ながらの手づくりだよ」と語る口ぶりが、何とも誇らしげでした。 |
そもそも上原集落では戦後50年ほど七夕綱の伝統が途絶えていて、2010年ごろに復活したのだそうです。町の社会福祉協議会が、地区のお年寄りのレクリエーションとして七夕綱に注目したことが復活のきっかけ。八代・芦北地方では、かつては30以上の集落に七夕綱の伝統があったといいます。それがいまやわずか5集落ですから、こうした方法で復活させるのは一石二鳥で素晴らしいことだと思いました。 | 1軒だけ見られた鍵屋造り |
右の団子形の飾りが「つと」 |
ちなみに、今回撮影した2015年の飾りは全部で26体。このうち草履・あしなかが13体を占め、あとは牛のくつ、馬のわらじ、ほて(虫追いに使う道具)、つと(卵を包む道具)など。このほか「家内安全」などと書かれたお札も数枚吊るされていました。 |
左から「ほて」「あしなか」「草履」 |
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綱を張ったのは8月2日で、お盆が明けてから取り外す予定だと聞きました。中断する前までは川に流していたそうですが、いまでは飾りをつくった人が家に持ち帰っているそうです。 |
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下屋をまわした入母屋造りの家が多い |
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