棚底
たなそこ
上に石組み、下にも石組み
棚底は近年「石垣めぐり」で売り出し中の集落。倉岳おろしと呼ばれる強風から家を守るため、高さ2〜3メートルの石垣が各家にめぐらされています。 |
【1】倉岳、標高682メートル。天草諸島の最高峰です。冬になるとこの山から強烈な季節風が吹きおろします。 |
棚底は天草上島の南海岸に位置する農村。背後には天草の最高峰である倉岳と、鋭くとがった矢筈嶽の2座がそびえたち、冬のあいだはこれらの山から吹きおろす北風に悩まされる地域です。そこで発達したのが、屋敷地の西〜北〜東に構えた石垣。平均して2〜3メートル、高いものでは5メートルにもなるという石垣が、家を守っているのです。 | 城跡のような石垣。背後は矢筈嶽 |
隅部に大きな石を使う算木積みが採用されている |
石垣の中には城郭と同じように、算木積みとしているものが見られます。算木積みは崩れやすい隅部に大きめの石を配するもので、その工法から、棚底の石垣は古くても江戸時代中期のものだと考えられています。造形的にも美しく、熊本城を彷彿させる曲線が見事です。 |
棚底で石垣とともに特筆されるのが、コグリと呼ばれる地下水路。全国で唯一といっていい、石づくりの地下水路網です。棚底は扇状地であるため地下水が豊富で、これを水田に供給するために建造されました。水路は底面以外の三面を石積みとし、長いものは100メートルほどになるといいます。中には家庭内に分水し、飲用とされたものもあったそうです。 | 左の拡大。よく見ると上は近代の排水溝だった |
棚田の石積みにコグリが口を開ける |
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コグリは民間の土木構造物としてきわめて貴重なものですが、1939(昭和14)年を最後に新築されておらず、揚水技術の進展とともに次第に使われなくなったこともあって、存続が危ぶまれています。地元の観光協会には、石垣とともにコグリもPRしてもらいたいと思います。 | |