木々子
きぎす
星と交信する村
熊本県南西部には七夕綱という七夕飾りを継承する集落があります。木々子もそのひとつで、七夕綱はもとより、渓谷に石垣を組んだ集落景観も見応えがありました。 |
【1】これが七夕綱。月遅れで8月6日に飾られます。お盆に祖先の霊が渡る道であり、収穫期を前に悪霊を払う結界としての意味があるそうです。 |
七夕は日本人に最も馴染み深い年中行事のひとつですが、その様相はきわめて複雑。中国の伝統と日本の習俗が融合し、階級(公家・武士・農民)や地域によってさまざまな形態をとるようになりました。長崎の精霊(しょうろう)流し、津軽のねぶた(ねぷた)なども七夕と同根とされ、悪霊を追い出す禊(みそぎ)として行われています。(ねぶたは本来、農作業の妨げとなる睡魔を払う行事です) | 木々子の七夕飾り |
中谷川を挟んで綱を張る |
そんな庶民の七夕行事の一端として、熊本県の八代・芦北地方では七夕綱が継承されています。綱は月遅れの8月上旬に集落の入口や広場などに張られます。収穫期を前に疫病や悪霊を防ぐ結界であり、お盆の時期に先祖の霊が渡る綱である、などと解釈されているそうです。 |
現在、七夕綱を継承する集落は八代市に1つ、芦北町に4つあり、すべて国の選択無形民俗文化財になっています。どの集落でも見事な七夕綱を見ることができますが、最も歴史的な集落景観を残していたのが八代市の木々子でした。 | 木々子の集落景観 |
傾斜地に民家が密集する |
木々子は球磨川の支流、中谷川が開いた谷の最奥に位置し、わずかな谷底低地に人家が建てられています。集落が傾斜地にあるため、どの家も石垣で土地をならしているのが特徴。七夕綱の伝統とともに、「石垣集落」として売り出してもいいと思えるほど、立派な石積みが連なっていました。 |
左の石垣は高さ2メートルほどある |
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建物も伝統的なものが多く残っていました。土地の制約によるのでしょう、石垣でならした屋敷地に、横長の主屋と馬屋を並べた家が多く、同じ九州山岳地方の椎葉村(宮崎県)などを彷彿とさせました。 | 長方形の主屋と馬屋を並べる |
入母屋の玄関を突き出した家も多かった |
ひな壇状に土地をならしている |