蕨
わらべ
海から始まった集落
蕨集落は佐世保沖の九十九島で最大の島、黒島にあります。ここでは江戸時代後期の開拓時の土地利用を見ることができます。 |
【1】黒島では19世紀に開拓が始まりました。季節風が絶えず吹き付ける強風の島であるため、開拓民は島に上陸すると、真っ先に木陰に家を建てました。 |
西彼杵(にしそのぎ)半島の北西、平戸島の南に浮かぶ黒島は、人口およそ450人の島。14世紀には現在の本村(ほんむら)地区に集落が形成され、江戸時代には平戸藩の牧場が開かれていました。 この牧場は享和3(1803)年に廃止され、跡地に九州本土から潜伏キリシタンが移住。その過程で成立した集落のひとつが蕨です。 |
黒島全景 |
原始の照葉樹林に囲まれた家 |
入植者は島に上陸すると、海岸近くに住居を築きました。周囲に島影がなく、強風の吹く日が多いため、家は防風林に守られるように建てられました。防風林では亜熱帯産のアコウや、実から油がとれるサザンカなどが重宝されました。その後、住居の背後に広がる斜面を開墾。こうして海から防風林、住居、耕地までが並んだ独特の景観が生まれたのです。 |
海を見下ろす急斜面に家が建つ |
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それぞれの家は数百メートルの間隔をあけて散っています。これは移住元の西彼杵半島の分家の習慣が導入されたためといわれています。 なお、黒島に移住した潜伏キリシタンたちは明治時代に信仰を告白し、カトリックとして復活しました。現在、黒島に8つある集落のうち、蕨を含む6集落はカトリックの村となっています。 |
散村のような風景が広がる |