南山手
みなみやまて

丘に居並ぶ洋館

「領事館の丘」として整備された東山手に対し、南山手は住宅地として整備されました。いまも江戸・明治時代の洋館が多数残され、グラバー園を擁する一大観光地となっています。

【1】グラバー園第2ゲート付近から町並みを一望しました。国宝・大浦天主堂がここに。
【2】天主堂の向かいに建つカトリック大浦教会。大浦天主堂が観光地になったいま、ミサはこちらの教会で行われています。
【3】天主堂の並びにある瓦屋根は長崎コレジオ(旧長崎教区大司教館)。1915(大正4)年築。
【4】このあたりにグラバー園が広がっています。これは園内に移築された旧長崎地方裁判所長官舎。1883(明治16)年築。
【5】南山手で唯一の石造の洋館、乙27番館。元治元(1864)年から慶応元(1865)年ごろの建築。

長崎は安政6(1859)年、横浜、函館とともに自由貿易港として開港し、東山手と南山手に外国人居留地が設けられました。このうち住宅地として整備されたのが南山手で、日本に建てられた最初期の洋館が現存しています。
ドンドン坂の洋館群

早朝の南山手。静かな土産物屋街の先に大浦天主堂が見えた
南山手を象徴する建物が国宝・大浦天主堂。元治2(1865)年に建てられた、日本に現存する最古のキリスト教会です。南山手は国の重要伝統的建造物群保存地区になっていますが、選定地区に国宝建築をもつのはここだけです。
天主堂の横には1875(明治8)年に建てられた旧ラテン学校と、1914(大正3)年に建てられたレンガ造りの長崎コレジオがあります。歴史的なキリスト教建築がこれほど密集して現存する町は、日本では長崎くらいでしょう。
大浦天主堂(奥)と長崎コレジオ(左)、旧ラテン学校(右)

旧グラバー住宅
大浦天主堂の裏手の丘に広がるのがグラバー園。江戸・明治時代に建てられた洋風の邸宅や公共建築など9棟を集めた一大テーマパークです(9棟中3棟は原位置保存)。一種の民家園のようなものですが、こうした施設を内包する重伝建もほかにはありません。
グラバー園の南西には現在も人々が暮らす洋館街が広がっています。とりわけ海岸通りからグラバー通りに通じるドンドン坂の周辺に多く、明治初期から中期にかけて建てられた上質な邸宅が見られます。ほとんどの家が2階建てでベランダをめぐらせ、暖炉の煙抜きの煙突をもちます。瓦屋根と煙突の組み合わせは、とても長崎らしいと思います。
武家屋敷を思わせる石塀の中に洋館が建つ

急斜面に建つ南山手乙9番館


南山手の洋館群


瓦屋根と煙突

グラバー園裏手(南側)の急坂の路地
 
ドンドン坂の坂上に建つレンガ造りは、1899(明治32)年に建てられた清心修道院。フランス人の設計で建てられたロマネスク様式の建造物です。
清心修道院

杠葉病院別館
清心修道院の向かには杠葉(ゆずりは)病院別館が建っています。こちらは明治中期に住宅として建てられた洋館で、1階と2階の柱間に入れられたアーチに特徴があります。
グラバー園の東にある南山手乙27番館は、石と木材を組み合わせた独特の建物。幕末に建てられた、南山手に現存する唯一の石造建築です。
南山手乙27番館


【住所】長崎県長崎市南山手町(地図
【公開施設】大浦天主堂、グラバー園、町並み保存センター
【参考資料】
『南山手の洋館 伝統的建造物群保存地区保存対策事業報告書』長崎市教育委員会、1977年

2009年12月30日撮


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