川内
かわち

飾り立てた2階家

かまぼこ加工業者の多い漁村・川内浦は、かつては平戸の副港とされる国際交易港だったところ。往時の名残りはありませんが、港から一本入った細道に古い町並みが見られました。

【1】本2階建てで下屋はなく、瓦葺きの庇を出す家が多く建っています。
【2】建ちが高く、2階正面に窓を入れる家が大半です。この家は欄間にも窓を入れています。かつての旅館か料亭でしょうか。
【3】1階入口の屋根を切妻や唐破風でデザインしたものが多数見られました。持ち送りも家ごとに凝っています。

平戸中心部から南西へおよそ6キロ。平戸島の東海岸に川内はあります。現在ののどかな光景からは想像できませんが、ここは江戸時代初期まで平戸の副港で、オランダ船や中国船が風を待ち、また、船を修理するために立ち寄る場所でした。
川内浦の景観

丸山の麓に町並みが広がる
最盛期にはオランダ商館が倉庫を置き、海に突き出た丸山には遊郭が開かれました。こうした歴史は江戸幕府の鎖国政策とともに幕を引きましたが、代わって江戸中期以降は平戸藩内有数の漁港として繁栄し、番所も置かれたといいます。
川内の古い町並みは湾岸の国道の裏道で見られます。本2階建て、平入りの住宅が建て込んだ町並みは、海岸近くまで山が迫る地形ゆえでしょう。特徴的なのが1階の玄関の造作で、切妻屋根や唐破風を乗せたものが散見されました。
切妻の玄関をもつ家

2階に手すりを入れた家
それぞれの家をよく見ると2階に大きな窓を入れ、手すりを回したものも見られました。こうした外観は、多くの客室を確保する料亭や旅館に特徴的なものです。一瞬「遊郭だったのかも」とも思いましたが、どの家も出入口は表に1カ所のみですから、確信はもてません。

古い2階家が点在する


庇を支える持ち送りが連続する

幕末以降の川内に関しては情報が見当たらず、詳しいことは分かりませんでした。しかし、わずか300メートルほどの道筋にこれだけの古民家が連なる町並みは貴重なものだと思います。歴史の証人として、末永く継承してほしいと感じました。


【住所】長崎県平戸市川内町(地図
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(42)長崎県』角川書店、1987年

2013年4月30日撮


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