浜中町・八本木宿
はまなかまち・はちほんぎしゅく

大壁造りの本陣町

長崎街道の脇街道、多良海道に沿った宿場町が、肥前浜の中町と八本木宿です。ここは醸造の町でもあり、多くの酒造家が軒を連ねました。

【1】鹿島藩の御茶屋(本陣)が置かれた八本木宿。有事にそなえ、身を隠したり、警護の者が身を潜められるよう、家々はジグザグに配置されています。「矢止め」と呼ばれ、全国の街道集落に見られる特徴です。
【2】多良岳のふもとの浜中町・八本木宿では酒造業が栄え、いまも7軒の蔵元があります。レンガ煙突をもつこの建物は飯盛酒造。
【3】浜中町・八本木宿の町並みは文政11(1828)年の強風で被害を受けました。その後、多くの家が、頑丈な大壁づくりで再建されました。

肥前浜駅の南側、浜川に沿ったエリアに、2つの重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)があります。ひとつは宿場町・醸造町の中町・八本木宿。もうひとつが漁村の庄津町・金屋町です。中町と八本木宿は旧街道の多良海道に沿った地域で、鹿島藩の本陣も置かれました。
大壁造りの町並み

光武酒造新宅の金属製の持ち送り

多良海道は観光パンフレットでは「酒蔵通り」と書かれています。ここは醸造町として栄え、いまも8軒の酒蔵が営業を続けています。中心部には切妻・妻入りの商家が建ち並び、とても迫力のある町並みが展開しています。大壁造りなので豪壮な雰囲気が漂いますが、2階の窓の造作を家ごとに変えていたり、金属製の持ち送りをそなえたり、各家で凝ったデザインが見られます。


中島酒造は2階に木製の手すりを入れる
ここは重伝建選定(2006年)後に町並み整備に着手。年次計画によって少しずつ修復されており、2008年に訪れたときには壁が剥げ落ちていた商家も(下写真)、5年後に再訪するとだいぶ塗り直されていました。これであと30年は大丈夫でしょう。
修復中の家、2013年撮影

酒蔵通りの家並み、2008年撮影


同左、2013年撮影


くど造りの家

佐賀県の民家で忘れてはならないのが、コの字平面のくど造り。中町・八本木宿にも数棟が現存しています。左の家もその一軒ですが、右棟と中央棟の棟が離れていて、分棟型のような外観をしているのがおもしろいと感じました。

当地区で最も見事なくど造りが旧乗田(のりた)家住宅です。19世紀の建造で、平面はユの字をしています。一見すると農家のようですが、武家住宅で、表側には立派な式台玄関もしつらえられています。


旧乗田家住宅、背面


旧乗田家住宅、正面の式台玄関


旧乗田家住宅の屋根裏部屋


継場の船底天井

この旧乗田家住宅や、同じく一般公開されている継場(つぎば)には、天井を折り上げた屋根裏部屋があります。船底天井と呼ばれる造作で、空間を少しでも広く取るための工夫とされています。


洋風建築の八宿公民館と継場


左の町並みを反対側から見る


【住所】佐賀県鹿島市浜町、古枝(地図
【公開施設】継場、旧乗田家住宅、光武酒造新宅、浜宿いきいき館

2008年1月3日、13年4月29日撮


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