長江
ながえ

新時代の棚田

農林水産省の「日本棚田百選」は、観光地として知られる一部の棚田を除き、ほとんどが地元の人にしか知られていないものばかりです。長江の棚田もそのひとつで、案内板もない山あいにひっそりと息づいていました。

【1】長江の棚田は集落内に20枚ほど、裏手の山中に60枚ほどあります。1945(昭和20)年ごろにかけて開かれたため、直線状の区画であるのが特徴です。
【2】間口の広い平屋の農家が点在しています。
【3】水田から転作されたと思われる茶畑もありました。

「日本棚田百選」に選ばれた水田は、集落とは離れた場所に開かれているケースが多いのですが、長江では10戸ほどの小集落に対峙するように展開しています。場所は大鈴山の西の麓。


棚田の石垣

百選の地でありながら案内板などはなく、たどり着くのに一苦労でした。途中、杉木立の林道に分け入ると「この先に田んぼがあるのだろうか」という不安に襲われるほど。しかし視界が開けると、目の前に新緑の鮮やかな集落と急勾配の棚田が広がり、日本の原風景を見た気がしました。

日本の有名な棚田は、等高線に沿って絶妙なカーブを描いているものが多いように思います。石川の白米千枚田も、千葉の大山千枚田もそうでした。ところが長江の棚田は長方形の区画でつくられています。勾配も急で、最大で12パーセント(8分の1)にもなります。これは形成時期が新しいため。棚田の開拓は明治時代から昭和20年まで続けられたといいます。


集落の向こうに棚田がある

集落の外れの1軒は板塀をめぐらせていた

棚田のみならず集落の風景も印象的で、間口10間もある家や、板塀をめぐらせた豪農風の家が見られました。


【住所】愛知県北設楽郡設楽町長江
【公開施設】なし

2014年5月7日撮


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