有東木
うとうぎ

ワサビ田と茶畑の風景

静岡市山間部の有東木では、静岡を代表する2つの作物、ワサビとお茶のなる風景が広がっています。

【1】有東木は標高500メートル前後の渓谷に広がる大規模な集落。斜面に茶畑がつくられています。
【2】川筋に近いところにワサビ田があります。栽培には水温12〜13度の寒冷な水が必要なため、夏の間は黒いシートで覆って日差しを遮断します。
【3】シートを吊るす支柱の代わりに、ワサビ田の中には木が植えられています。

静岡市の秘湯、梅ヶ島温泉に向かう県道29号線沿いに、有東木の集落はあります。ここはワサビ栽培の発祥地とされる場所。村人が渓谷に自生していたワサビを湧水地に移植し、栽培に成功したことに始まると言い伝えられています。徳川家康はこの地のワサビを門外不出の御法度品に定めたといいますから、そのころからすでに高度な品質を保っていたのでしょう。


川沿いにワサビ田が広がる

畳石式のワサビ田

現在、有東木で行われているワサビ栽培は畳石式(たたみいししき)というもの。ワサビ田を棚田状につくり、湧水を起点に水を自然流下させる手法です。このため有東木のワサビ田は、谷筋に沿って帯状に展開します。

ワサビ田には夏の間、日差しを避けるシートを掛けます。そのための支柱となる木が植えられているのも特徴。
参考書籍の『食と建築土木』には、「かつては田畑の中ほどに樹木がある風景をよく見たが、種まき、収穫、管理などで田畑に機械を入れるようになり、除去されてきた。ここではその様子がまだ残っている」と書かれています。


ワサビ田の中にハンノキなどの落葉樹を植える

斜面に埋もれた平屋の家

谷筋のワサビ田を囲むように、有東木の丘陵斜面ではお茶が栽培されています。住宅も傾斜地に建てられているため、石垣は必需品。中には丘陵斜面に埋もれるように建てられた家もありました。


古い木造家屋が点在する

家は建て直されているが石垣は味がある
   
集落中心部では現代的な2階家に改築された家が目立ちましたが、周縁部ではいまも入母屋造りの古い家が点在し、静岡ならではの散村風景が残されていました。


【住所】静岡県静岡市葵区有東木
【公開施設】なし
【参考資料】
『食と建築土木 たべものをつくる建築土木(しかけ)』後藤治・二村悟著、LIXIL出版、2013年

2014年6月1日撮


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