下平瀬
しもひらせ

吊り橋の先へ

静岡市の山間部には緑豊かな茶園のある集落が点在しています。落合の下平瀬もそのひとつ。川の水と山の緑が美しい山里でした。


【1】安倍川水系には急な谷が多く、吊り橋がたくさん架けられています。
【2】橋の向こうに茶農家が点在しています。
【3】陰になって写っていませんが、家の周りは一面、茶畑です。ここには茶畑のシンボルともいえる霜よけの扇風機がありません。いまでも昔ながらにビニールシートなどを使っているのでしょうか。

下平瀬のある落合地区は、安倍川の支流である中河内(なかごうち)川と西河内川の合流点であることからこの地名が付けられました。集落の歴史は浅く、元禄年間(1688〜1704年)に名主の狩野家の別家が開いた土地といいます。
当地で茶栽培がいつごろ始まったのかは分かりませんでしたが、江戸の茶問屋の株仲間に対し、茶農家が取引の自由化などを求めた文政の茶一件(文政7=1824年)には参加していますから、早くから茶栽培は盛んだったようです。


6月1日、村には緑があふれていた

狩野家(東)の石垣

下平瀬はわずか6戸ほどの小さな集落で、西河内川の南岸の傾斜地に展開しています。それほど急な土地ではないのですが、競うように石垣を重ねた家もあり、まるで城塞のようです。


狩野家(東)住宅。手前の茶畑と梅林(おそらく)がまるで庭園のよう

下平瀬で最も見事な石垣をもつのが、第8回しずおか市民景観大賞で最優秀賞を受賞した狩野家住宅です。審査委員長の建築家、藤森照信氏が激賞し、その光景を見たくて行ってきましたが、なるほど一見の価値ある景観でした。
同賞の選評では狩野家住宅にのみ言及していますが、その西にある同姓の狩野家住宅も見ごたえ十分。遠路はるばる訪ねた甲斐のある風景を楽しませていただきました。


狩野家(西)の石垣

狩野家(東)住宅。畑に囲まれて各棟を配置する


狩野家(西)住宅。こちらは通りに沿って各棟を配置


【住所】静岡県静岡市葵区落合
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(22)静岡県』角川書店、1982年

2014年6月1日撮影


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