鳥沢
とりさわ

国道にずらり平入り

甲州街道の宿場町、鳥沢には昔のままに平入りの町家が建ち並んでいます。道が国道となり、交通量が増えてもなお、この風景を保っていることに感激いたしました。

【1】2階の正面を出梁(だしばり)造りとして突き出しています。こうした造作は中山道の宿場町で広く見られます。
【2】出梁造りとしない家も、1階正面に庇を掛けています。日除け、雨除けのための造作でしょう。
【3】破風板は軒の部分だけ厚くします。これも山梨県東部で見られる装飾です。

かつて鳥沢は下鳥沢と上鳥沢に分かれ、それぞれ江戸から数えて甲州街道で21番目、22番目の宿場町として機能していました。しかし両宿はほとんど隣接し、馬や人足を交代する継立(つぎたて)などは半月交代で行われていたそうです。
上鳥沢の町並み

上鳥沢の町並み

現在の甲州街道にはJR中央線が並走し、当地には鳥沢駅があります。この駅より東京側が下鳥沢、甲府側が上鳥沢です。街道は自動車の交通量が多く、落ち着いて散策できませんが、町並みは見事です。平入りの町家が連続し、屋根が一直線にそろった統一感のある町並みです。

ここでは2階を出梁造りとし、道路側にせり出した家が見られます。全国の宿場町で、商家や旅籠の造作としてよく見られるもので、2階の客室を広く取るためとか、雨天時にも軒下で身支度をできるようにするためなどと説明されますが、本当のところはよく分かりません。
出梁造りとしない家は庇を掛ける(下鳥沢)

2階の軒下に独特の木組みを見せる(上鳥沢)

鳥沢ではさらに2階屋根の軒下にも梁を出して独特の木組みを見せたり、破風板の一部を大きくして化粧とするなど、独特の建築技法を見ることができます。


破風板は表の軒の部分で幅を変える(下鳥沢・マウスオーバーで表示)


【住所】山梨県大月市富浜町鳥沢
【公開施設】なし
【参考資料】
『図説日本の町並み(5)中部編』第一法規、1982年

2015年1月7日撮


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