西保中
にしほなか

三階楼と渡り廊

西保中は「山梨市景観百選」に選定された5つの養蚕集落のひとつ(ほかは切差〈きっさつ〉、江曽原、徳和、日川中村)。これらの中では大規模な集落で、東西1キロ、南北500メートルほどにおよびます。


【1】集落は丘陵地にあるため、多くの家が石垣で土台を築いています。
【2】土地の制約からでしょうか、西保中には3階建ての民家がたくさん見られます。多くは真壁造りで、白壁と梁が描く模様がとてもきれいでした。
【3】主屋と付属屋を接続させた農家は、甲府盆地では多く見かけましたが、西保中ではそれぞれの2階部分をつないだものが多いように感じました。

西保は鼓川(つづみがわ)、赤芝川沿いの広域地名で、江戸時代には西保北村、西保中村、西保下村がありました。このうち西保中村の系譜を引くのが現在の西保中で、明治時代以降、養蚕が主産業となりました。


西保中集落

この集落を訪ねて驚かされるのが、3階建て民家の多さです。山梨県では養蚕の普及とともに2階を蚕室とする家が増えましたが、これほど3階建ての多い集落は、わたしが訪ねた範囲では見覚えがありません。丘陵地に展開するため、土地の確保が難しかったせいもあるのでしょうが、産業としての養蚕が大いに盛んだったことも一因ではないでしょうか。

また、主屋と付属屋の2階部分を渡り廊下でつないでいる家も多く、西保中の特徴と思います。付属屋の中にも3階建てのものがありました。


思わず見上げてしまう3層の付属屋

主屋と付属屋を結ぶ

茅葺きの門

現在では養蚕は営まれていないか、営まれていたとしても零細化している様子です。集落には桑畑は見られず、代わりに広大なブドウ畑が広がっていました。


やぐら造りの農家


【住所】山梨県山梨市牧丘町西保中
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(19)山梨県』角川書店、1984年

2016年9月3日撮


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