長浜
ながはま

瓦のない村

長浜は河口湖の西岸にある集落。室沢川沿いに養蚕農家が、湖畔には旅館や商店が点在しています。

【1】ここに河口湖があります。
【2】屋根の端が切り落とされたかのように見え、その姿からかぶと造りと呼ばれる民家。屋根裏の採光・通風を確保するために改造されたもので、養蚕の普及とともに広まりました。
【3】屋根勾配の緩やかな家はもと板葺きで、現在ではトタンに葺き替えられています。長浜の家は伝統的に茅葺きか板葺きで、瓦葺きはありませんでした。

『図説日本の町並み(5)中部編』の長浜の項を引くと、「瓦の普及が皆無」と書かれています。現在の長浜ではトタン葺きの家が多数派ですが、屋根形状から見るに、そのほとんどが茅葺きか板葺きだったことは明らかです。同書では理由をこう説明します。
「家屋の構造、資金、採算などの問題とともに、地瓦は裏日本に見られる釉薬瓦のもつ耐寒性を欠いており、900メートルを超える高冷地には不適であった点が考えられる」

長浜の茅葺き民家

二重かぶと造りで突き上げ屋根をもつ家
茅葺き民家はすべてかぶと造りです。寄棟造りの妻側の屋根が切り落とされたような形態で、養蚕を行う2階や屋根裏の採光と通風をよくしたものです。また、かぶとを二段重ねた「二重かぶと造り」や、平側の屋根に「突き上げ屋根」という天窓を開けたものも見られました。これらの構造は養蚕の普及とともに南関東に広まりましたが、山梨県が発祥地とされています。

茅葺きの家はほとんどトタンで補修されている


かぶと造りが向き合って建つ

屋根傾斜の緩やかなトタン葺きの家は、かつては板葺きだったものと思われますが、大正以降に創建されたものは、あるいははじめからトタンで葺かれたかもしれません。
トタン葺きの家

湖畔に建つ木造2階。もと旅館か。現在は簡易郵便局

瓦葺きの家もあったが、これもオリジナルは板葺きだろうか


【住所】山梨県南都留郡富士河口湖町長浜
【公開施設】なし
【参考資料】
『図説日本の町並み(5)中部編』第一法規、1982年

2011年5月1日撮


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