台ヶ原
だいがはら

エコパークの宿場町

台ヶ原は全長1.5キロにおよぶ長大な宿場町。雄大な南アルプスを背景に、いまも歴史的な商家や旅籠を残しています。

【1】釜無川の扇状地を甲州街道が貫きます。道は諏訪方面に向かって、緩やかな上り坂になっています。
【2】行く手の山容は南アルプス。このあたりは山脈の北端部です。甲斐駒ヶ岳は写真左手の方向。宿場内からは見ることができません。
【3】平入りの町並みに杉玉が吊るされています。南アルプスの伏流水が、ここに銘酒を生んだのです。

南アルプスは本州では指折りの原生地帯。3000メートル級の山々には高山植物やライチョウ、ニホンカモシカなどが生息しています。1976(昭和51)年には静岡県側の大井川源流部が環境庁の原生自然環境保全地域に指定され(2015年現在、本州唯一)、2014年には山脈一帯がユネスコエコパークに登録されました。このエコパークの片隅に、台ヶ原宿はたたずんでいます。
台ヶ原の町並みと甲斐駒ヶ岳

道の駅はくしゅうの湧水

生活者の視点で、南アルプスの自然の豊かさを最も実感できるのが湧水でしょう。特に山脈北部の甲斐駒ヶ岳一帯では、石英質を含む地層でろ過され、金属イオンが除かれた清らかな水が湧き出ています。台ヶ原の道の駅にも湧水地点があり、そこから北西へ5キロのサントリー工場では、かの有名な「南アルプスの天然水」が採水されています。

名水の地には銘酒あり。ということで、ここ台ヶ原にも300年の歴史を誇る酒蔵・山梨銘醸が所在します。寛延3(1750)年、甲斐駒ヶ岳の伏流水に魅せられた初代がこの地で酒造りを始め、以来現在に至るまで伝統を守り続けています。
その後は酒造のかたわら、台ヶ原宿の脇本陣を務めました。現在の主屋は天保(1830〜45年)から嘉永(1848〜55年)にかけて完成し、明治13(1880)年には明治天皇の行幸の際の行在所(あんざいしょ)になりました。

山梨銘醸(北原家住宅)。深い軒が印象的

金精軒

山梨銘醸のはす向かいに建つのが和菓子屋の金精軒。甲州名物・信玄餅の商標をもつお店で、1902(明治35)年、甲府の金精軒からのれん分けして創業しました。店舗はかつて旅籠だった建物です。

台ヶ原の家は宿場町らしく道路に面して建っていますが、その中に1軒、寺院風の門と塀をそなえた家があります。社家を務めたD家住宅で、主屋は元禄13(1700)年築と、台ヶ原では有数の古さ。門をくぐった正面に式台玄関を構えた独特の外観です。
旅籠の面影をとどめる家

D家住宅主屋


D家住宅前の門と塀

町並みの西側で目をひくのが、つるや旅館です。創業年の情報は見当たりませんでしたが、伝統的な旅籠建築の外観をとどめ、2階に手すりや持ち送りを入れた、にぎやかな印象を受ける建築です。
街道はこの先で右に折れ、次の教来石(きょうらいし)宿に向かいます。しだいに妻入りの農家風の家が目につくようになり、台ヶ原中心部とは異なる町並みになっていきます。

つるや旅館。古いガラス張りが味わい深い

妻入りの家が連なる白州地区の町並み


白州地区では道沿いに土蔵も見られた


【住所】山梨県北杜市白州町台ヶ原、白州町白須
【公開施設】山梨銘醸(北原家住宅)

2015年1月7日撮


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