武生
たけふ
庇は産業を語る
福井平野の南部にあって北陸街道が縦貫する武生は、古くから経済の中心地でした。市街地のかなりの範囲に、歴史的な平入り商家が連なる町並みが保存されています。 |
【1】武生中心部にある通称「タンス町通り」。商家の庇は、杉の厚板を2枚重ねて葺かれています。 |
武生は越前国府が置かれ、古くから政治・経済の拠点だった土地です。そんな歴史をいまに伝えてくれるのが、町内各地に残された商家です。現代の都市の中心部に、これほどの範囲にわたって古い家が残されているのは非常に驚くべきことと思います。とくに南北に走る広小路通りと表町通りには、間口6間ほどの大型商家が連続しています。近代的なビルが浸食する中、うだつを上げた家も見られました。 |
三連棟長屋の商家(広小路通り) |
むくり屋根が優美な大塚呉服店(広小路通り) |
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刃物問屋が並ぶ一画(表町通り) |
武生は商業と工業の町でもあります。表町通り南部のあおば町付近には現在でも刃物問屋が軒を連ねていますし、表町通りから西へ入るタンス町通りは、その名の通りタンス職人が集住した土地で、現役の工房が何軒も見られます。 |
タンス町通りの町家は、杉の厚板を2枚重ねて葺いた庇に特徴があります。冒頭でも説明した通り、これは搬入する資材に傷をつけないようにするためのもの。トタンで葺き直された庇もありますが、かなりの町家で杉板が残されていました。板は1枚7〜8センチほどですから、重ねると15センチほどになります。 |
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杉の厚板で葺かれた庇(タンス町通り) |
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うだつ、煙出し、出格子をもつ家(表町通り) |
駅から1キロ圏内、しかも国道に面した場所に、これほどの規模で町家が残されている都市は全国でも稀です。これまで市教育委員会による調査も、ナショナルトラストによる保存活動も行われていないことが不思議なくらいです。 |
袖壁のある商家が道の両側に並ぶ(蛭子通り) |
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2014年5月6日撮影 |