三丁町
さんちょうまち

モデルは京都祇園

小浜西組の西の外れにある三丁町は、京都の祇園を模したといわれる花街です。ベンガラ塗りの出格子のお茶屋がずらりと並ぶ光景は、京都や金沢の花街にも負けず情緒的です。


【1】茶屋、蓬嶋楼(ほうとうろう)の2階から町並みを見渡したところ。客室はやや下がった場所にあるため、前の道からは隔てられた別世界になっています。
【2】お茶屋は2階が客室。したがって建ちが高く、2階の全面に格子や窓が入れられています。
【3】木部はベンガラで塗られ、花街ならではの粋な風情を演出します。

小浜西組の西端にある三丁町は、ベンガラ塗りの格子が艶やかな茶屋町。もと猟師町、柳町、寺町という3つの町があり、これが地名の由来といわれています。ここは小浜西組の一部として国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されていますが、丹後街道沿いに町家や寺院が連なる西組にあって独特の町並みを形成しています。


無目の入った出格子。K家住宅

三丁町は貞享元(1684)年ごろまでには開発されていたと考えられます。現在も全長200メートルほどの一本道の両側に明治以降の茶屋建築が建ち並び、繊細な格子戸や腰壁の装飾が華やかな印象を与えます。
三丁町の格子の特徴が、上のほうに水平材を入れていること。無目と呼ばれる材で、これを境に上と下でデザインを変えています。また、同じ小浜でも三丁町は出格子が多い点も特徴です。


木広(松原邸)。同じく出格子に無目が入る

町並みの北側にある旧料亭酔月は「町並みと食の館」として公開されていますが、そのほかの建物は常時非公開。しかし年に一度、夏に開催される「町家deフェスタ」の日になれば、数棟の茶屋や民家が一般公開されます。


旧料亭酔月。2階の手すりが凝っている


蓬嶋楼玄関部。床はタイル貼り

三丁町のシンボルが、町並みのほぼ中央にある蓬嶋楼。明治時代の大規模な茶屋です。表通り側は高さ2メートルを越す高壁に囲まれ、中の様子はうかがえませんが、2階の座敷からは向かいの家並みや遠方の山並みまで見渡すことができます。プライバシーと眺望を両立した、茶屋建築ならではの空間設計ですね。


蓬嶋楼。入口上部の庇にむくりがある

蓬嶋楼以外の茶屋は、ほとんどが通りいっぱいに建物を建てています。立ちの高い2階家がずらりと並ぶ町並みは茶屋町ならでは。外観は1階に格子、2階にガラス窓を入れる点で共通していますが、細部の装飾は家ごとに異なり、変化に富んだ町並みを見せています。


自然木をそのまま格子にはめた数奇屋風の出格子


むくり屋根が京風の町並みを演出する

蓬嶋楼座敷


木広(松原邸)中庭


【住所】福井県小浜市小浜香取、小浜飛鳥
【地図】逢嶋楼
【公開施設】町並みと食の館(旧料亭酔月)
【参考資料】
『わかさ小浜の町並み 旧小浜町町並み調査報告書』小浜市教育委員会、1992年

2010年5月4日、13年7月28日、14年5月6日撮


戻る