小浜東組
おばまひがしぐみ

海のある京

小浜は旧市街の全域にわたって古い町家や町並みが見られる町です。その中でよく知られているのは三丁町のある西組ですが、反対側の東組にも見事な路地裏風景が広がっていました。

【1】目の細かい犬矢来。京の路地裏に迷い込んだかのような錯覚を覚えますが、ここは小浜。潮風が香ります。
【2】町家をずらして配置しているのは、ここが城下町だからでしょうか。
【3】若狭名物の立浪瓦がありました。


小浜東組の景観

江戸時代、小浜城下52町は東組、中組、西組の3つに分けられていました。商家町だった中組と西組に対し、南川の河口に位置する東組は廻船問屋の集まる地域でした。当時、日本海岸屈指の規模を誇った小浜湊を有し、3組の中で最も栄えたといいます。

路地裏には格子や袖壁をもつ町家が見られ、その連続性は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている西組に匹敵します。とくに湾岸の“蔵並み”の一本裏にこうした町並みが展開するさまは劇的で、舞鶴(竹屋町あたり)と京(下京あたり)を同時に楽しめる感があります。


東組の路地裏。左の倉庫街の前に海がある


袖壁が見事な町家の連なり


左の町家群の向かいにある長屋


港に湧き出る雲城水(左のやぐら)

小浜東組は名水の地でもあります。敷地内に湧水の井戸をもつ家があるほか、道端にも雲城水(うんじょうすい)や津島湧水が湧き出ています。これらの水は小浜中心部から10キロ以上離れた上根来(かみねごり)の森に蓄えられたもので、100年以上の時をかけてこの地へ湧き出ているのだそうです。それにしても、雲城水も津島湧水も海から10メートルしか離れていないことには驚かされます。

小浜はかつて日本海に面した国際交易港でした。海のシルクロードを伝ってきた文物はここを経由して朝廷へ運ばれ、小浜にも数々の寺院が建立されました。小浜はその町並みから「海のある奈良」と呼ばれますが、東組の路地裏は「海のある京」と呼びたくなるものでした。


津島湧水周辺


【住所】福井県小浜市小浜津島、小浜多賀、小浜清滝、小浜一番町
【公開施設】なし

2015年6月15日撮


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