勝山
かつやま

雪が育んだ町並み

勝山は福井藩の支藩・勝山藩の城下町だったところ。南北に延びる本町の道筋に、雪国らしい重厚な町家が並びます。

【1】重厚な町並みを演出するのが、屋根を支える登り梁。断面の長辺は1尺はあるのではないでしょうか。
【2】1階の庇に小さな持ち送りが取り付いています。何ともかわいらしいですね。
【3】深い庇は北陸の町家のシンボル。幕板を付けたものもあります。

越前の大河、九頭竜(くずりゅう)川。この川の中流・右岸(東岸)に、約28キロにわたって断続的に続く段丘崖が見られます。その名も「七里崖」といい、比高およそ5〜10メートルの段丘が数段に重なりながら延びています。勝山の城下町はこの段丘の上下にまたがるようにつくられました。


河岸段丘にある勝山は坂の町


勝山の町家。屋根下の登り梁は大迫力

江戸時代、段丘の上段は城や武家屋敷を配した武家町、下段は寺院や町家の並ぶ町人町でした。古い町並みが残るのは町人町のほう。屋根を支える登り梁は、北陸の町家に共通する構造ですが、勝山のものはどの家の梁も太め。多いときには2メートル以上の積雪があるという、雪国ならではでしょう。


商家が連なる町並み

また、1階の庇も越前の町家でよく見かけますが、反り屋根とむくり屋根、板葺きと瓦葺きなど、家ごとにさまざまな意匠が見られるのが勝山流。さらに庇の側面には小さな持ち送りまで設けられていましたが、同様の意匠はほかの町では見なかったような気がします。


1階庇の細部

直線的な板葺きの庇(手前)とむくり屋根の庇

路地裏の大清水(おおしょうず)

勝山は名水の地でもあり、市内各所に湧水地があります。大量の雨や雪が段丘面にしみ込み、段丘の下段で湧き出たもので、古くから生活用水として欠かせないものでした。

降水量が多いということは、湿度が高いことを意味します。これは明治以降、当地に絹織物業が興った理由にもなりました。湿度が高いと絹を織る際、切れにくいという利点があるのだそうです。
勝山では家のかたちだけでなく、人々の暮らしも、産業も、すべてを気象が決めてきたのですね。


うだつのある家。庇は瓦葺き


大清水に続く路地に板張りの家があった


路地裏の料亭建築


【住所】福井県勝山市本町1〜3丁目、栄町1丁目、沢町1丁目
【公開施設】なし
【参考資料】
恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク−>九頭竜川などの河川とその地形

2015年6月14日撮


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