上根来
かみねごり

究極の山村

小浜市中心部から南へ13キロ。標高300メートルの山中にある上根来は、いまや無住の集落ですが、地元では集落の再活性化プロジェクトが進行中です。

【1】集落には茅葺きの民家が7棟ありますが、すべてトタンで覆われ、赤錆びたものもあります。麓に移り住んだかつての住民は言いました。「このトタンが朽ちるとき、村は消える」と。
【2】傾斜地に展開する山村ゆえ、土台を石垣で固めた家や蔵が点在しています。
【3】上根来で民家とともに存在感を発揮するのが、いくつもの蔵。1メートルはあろうかという深い軒は、この地が雨や雪の多い土地であることを教えてくれます。

小浜と京を結ぶ海産物輸送の道「鯖街道」は、複数のルートに分かれていました。このうち最短ルートだったのが小浜からほぼ一直線に南下する針畑(はりはた)峠越えの道。上根来はその道沿いにあって、若狭で最後の集落でした。
上根来には宿駅としての機能はなく、古くから農村だったようです。ここは山間部にあって耕地に恵まれないことから、炭焼きが重要な稼業でした。集落を取り巻く山中にはいまも無数の炭焼き窯が残されています。重厚な石組みを残す窯の数々は、まるで古代遺跡のようです。


深い山並みに囲まれた上根来集落(2012年9月16日)


かつての炭焼き窯(2011年10月22日)


現存する唯一の炭焼き小屋(2011年9月24日)


村外れの畜産団地跡(2012年7月15日)

石油の時代になると炭焼きから林業へ転換しましたが、安価な輸入木材が入るようになると衰退し、今度は肉牛の生産に着手します。このとき村外れに、最大で500頭を飼育できる巨大な畜産団地が建てられました。事業開始から10年ほどで初期投資を完済し、地域の産業モデルとして注目されたそうですが、直後に牛肉の輸入が自由化され、1991年に廃業したそうです。

製炭業から林業、そして畜産業へ、時代に追われるように次々になりわいを変えた上根来でしたが、最後には豪雪地帯であることが災いして住民の離村が進みました。こうして2014年現在、無住の集落となっています。


雨上がり、霧が立ちのぼってきた(2013年5月4日)

 

 


入母屋造りの家が多い(2010年5月4日)

上根来の民家は無住でありながら、一見してどれもきれいな姿を保っています。これは、麓に移り住んだかつての住民が、定期的に手入れをしているため。現在、主屋は15棟ほどが残されていて、このうち7棟は茅葺き(トタン被覆)です。入母屋造りですが妻壁が小さく、独特の風貌をしています。外縁をもたず、四周に板壁を張っているのは、吹きつける雨や雪から家を守るためでしょうか。


軒が深く、板壁で防備している(2010年5月4日)


稲などの作物を干す稲木が残っていた(2010年5月4日)

屋根のトタンは張られてからかなりの時間が経過しているようで、中には赤錆びたものも見えます。家や村が朽ちてしまうのも、もはや時間の問題のようにも思えてきます。
そんな現状に「待った」をかけるべく奮戦しているのが、小浜市民の有志で結成された「上根来プロジェクト」。古民家をゲストハウスとして活用したり、棚田や畜産団地跡でイベントを開催しています。最終目標は、グリーンツーリズムで上根来を復活させること。今後の活動を見守りたいと思います。


ゲストハウスの囲炉裏(2012年7月14日)


ゲストハウスとして活用されている家(2012年9月17日)


旧上根来小学校(2013年5月4日)


旧上根来小学校(2011年9月25日)


棚田跡で行われたモニタリングツアー(2013年5月5日)


村を見守る広峯神社(2011年9月25日)


【住所】福井県小浜市上根来
【地図】トップ写真の撮影地点畜産団地跡
【公開施設】なし
【参考資料】
かみねごりプロジェクト(上根来pj)

2010年5月4日、11年9月24〜25日、10月22日、12年7月14〜15日、9月16〜17日、13年5月4〜5日撮影


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