上根来
かみねごり
究極の山村
小浜市中心部から南へ13キロ。標高300メートルの山中にある上根来は、いまや無住の集落ですが、地元では集落の再活性化プロジェクトが進行中です。 |
【1】集落には茅葺きの民家が7棟ありますが、すべてトタンで覆われ、赤錆びたものもあります。麓に移り住んだかつての住民は言いました。「このトタンが朽ちるとき、村は消える」と。 |
小浜と京を結ぶ海産物輸送の道「鯖街道」は、複数のルートに分かれていました。このうち最短ルートだったのが小浜からほぼ一直線に南下する針畑(はりはた)峠越えの道。上根来はその道沿いにあって、若狭で最後の集落でした。 上根来には宿駅としての機能はなく、古くから農村だったようです。ここは山間部にあって耕地に恵まれないことから、炭焼きが重要な稼業でした。集落を取り巻く山中にはいまも無数の炭焼き窯が残されています。重厚な石組みを残す窯の数々は、まるで古代遺跡のようです。 |
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かつての炭焼き窯(2011年10月22日) |
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村外れの畜産団地跡(2012年7月15日) |
石油の時代になると炭焼きから林業へ転換しましたが、安価な輸入木材が入るようになると衰退し、今度は肉牛の生産に着手します。このとき村外れに、最大で500頭を飼育できる巨大な畜産団地が建てられました。事業開始から10年ほどで初期投資を完済し、地域の産業モデルとして注目されたそうですが、直後に牛肉の輸入が自由化され、1991年に廃業したそうです。 |
製炭業から林業、そして畜産業へ、時代に追われるように次々になりわいを変えた上根来でしたが、最後には豪雪地帯であることが災いして住民の離村が進みました。こうして2014年現在、無住の集落となっています。 |
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入母屋造りの家が多い(2010年5月4日) |
上根来の民家は無住でありながら、一見してどれもきれいな姿を保っています。これは、麓に移り住んだかつての住民が、定期的に手入れをしているため。現在、主屋は15棟ほどが残されていて、このうち7棟は茅葺き(トタン被覆)です。入母屋造りですが妻壁が小さく、独特の風貌をしています。外縁をもたず、四周に板壁を張っているのは、吹きつける雨や雪から家を守るためでしょうか。 |
軒が深く、板壁で防備している(2010年5月4日) |
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屋根のトタンは張られてからかなりの時間が経過しているようで、中には赤錆びたものも見えます。家や村が朽ちてしまうのも、もはや時間の問題のようにも思えてきます。 そんな現状に「待った」をかけるべく奮戦しているのが、小浜市民の有志で結成された「上根来プロジェクト」。古民家をゲストハウスとして活用したり、棚田や畜産団地跡でイベントを開催しています。最終目標は、グリーンツーリズムで上根来を復活させること。今後の活動を見守りたいと思います。 |
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ゲストハウスとして活用されている家(2012年9月17日) |
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旧上根来小学校(2013年5月4日) |
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棚田跡で行われたモニタリングツアー(2013年5月5日) |
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2010年5月4日、11年9月24〜25日、10月22日、12年7月14〜15日、9月16〜17日、13年5月4〜5日撮影 |