江波
えなみ

真壁の美の極致

北陸地方は妻壁に柱と貫をあらわにした真壁造りの多い土地ですが、ここ江波の集落景観はひときわ見事なものでした。

【1】柱と貫が白壁に格子模様を描きます。それにしても真壁造りの家はほんとうにきれいですね。
【2】寺院建築よろしく、貫に刳型(くりがた)を入れた家もあります。
【3】主屋の前方に大きな下屋を出したり、それが発達した長屋風の建築を設けるのは、越前から加賀にかけて広く見られるスタイルです。

江波は旧宮崎村の中心地で、村役場もここに置かれていました。真壁造りの家が集まった見事な集落景観に関しては、情報がほとんどなく、いつごろのものなのか、また、なぜこうした家が建てられたのかは分かりませんでした。


水田地帯に真壁の家が点在する

間口12間の下屋

家はほとんどが切妻造り、妻入りで、表に大きめの下屋を出しています。三国で見られるかぐら建ての原型にも見えますが、なぜこれほど大きな下屋が必要とされたのでしょうか。
大きなものになると下屋部分の間口は12間もあります。さすがにここまで巨大化すると下屋ではなく、立派な建築物ですよね。

江波の家の中には、貫の先端に彫刻を施したものも見られました。こうした彫刻は刳型と呼ばれ、寺社建築ではおなじみですが、民家での採用例はほとんどありません。宮大工が建てた家なのか、あるいは一時的なブームとして広まったものなのでしょう。


寺院建築のように刳型装飾を施した家


寺院の庫裏といった風格

宮大工といえば、これらの家の中には煙出しの小屋根を乗せたものもあり、その風貌はどことなく寺院の庫裏(くり)を思わせました。煙出しは腰部が板張りで、主屋ともども歴史を感じさせるつくりです。


直線の破風が連続する中、煙出しだけは反り屋根で優美


大きな家になると屋敷地を板塀で囲んでいる

江波の集落景観に関しては公開されている情報が少なく、切妻の家並みを見わたせる俯瞰地点がどこにあるのかも分かりませんでした。初めて行ったときは住民にたずねても場所が分からず、結局日没でタイムアウト。帰宅後に再度調べてみると、何のことはない、集落の対岸にある宮崎小学校前であることが分かりました。
そうして1年後に再訪して撮影したのが、トップ写真です。俯瞰地点には解説板も設置されていました(右写真)。


【住所】福井県丹生郡越前町江波
【公開施設】なし

2014年5月6日、2015年6月15日撮影


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