輪島
わじま
京町家のイミテーション
輪島は日本を代表する漆器の産地。そんな町の歴史を反映するのが、ここでしか見られない塗師屋(ぬしや)造りと呼ばれる家です。貴重な現存遺構を見学させていただきました。 |
【1】ほとんどの木部は拭き漆仕上げ。漆を10〜15回ほど「塗っては拭いて」を繰り返したものです。 |
輪島塗は徹底した分業体制によってつくられ、原木を器の形に彫る木地師、下地や漆を塗る塗師、装飾を加える沈金師、蒔絵(まきえ)師など、多くの職人が関わっています。これらの職人を束ねた「親方の家」が、塗師屋造りと呼ばれます。 |
塗師屋造りの家 |
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外観は白木のままで、つとめて質素。これは「商家ではありません」というアピールです。しかし内部は拭き漆仕上げで、「京町家よりも華やかではないか」と思うほど。お得意先である京・堺の町家や茶室を模したもので、職人が美的センスを磨く空間でした。土間入口が狭いのは、茶室のにじり口そのもの。ほかにもトオリニワや坪庭など、京町家でおなじみの空間がしつらえられています。 |
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坪庭。さざんかは幹だけを見せ、地面に散った花を観賞する |
塗師屋造りのもうひとつの特徴が、塗師蔵と呼ばれる蔵を内蔵していること。蔵の前の縁で下塗りが、蔵の2階で上塗りが行われました。上塗りを行うときは入口を密閉し、中で埃が立たないよう細心の注意が払われました。 |
塗師蔵 |
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塗師屋造りの家は現在、輪島市の河井町と鳳至上町(ふげしかみまち)に点在し、鳳至上町では「千舟蔵」という蔵が通りに面して存在感を発揮していました。これも塗師の付属施設だったそうですが、内部は作業場(塗師蔵)だったのでしょうか。いまではギャラリーやコンサートホールとして活用されています。 |
塗師屋造りは、輪島の産業が生んだ、輪島でしか見られない建築です。家のようであって住まいにあらず。工芸品のようでもあり、民俗文化財でもある。この素晴らしい遺産を、いつまでも大切にしてもらいたいと思いました。 |
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千舟蔵の向かいの家並み |
2015年6月13日撮影 |