奥原
おくはら

納屋は舟屋を兼ねる

能登半島きっての観光地、和倉温泉の目と鼻の先に、のどかな漁村風景が残っています。波穏やかな七尾西湾に10数棟の舟屋兼納屋が居並んでいます。

【1】沖合いに牡蠣の養殖イカダが見えます。
【2】港とイカダを行き来する船を格納し、さまざまな漁仕事をするための納屋です。奥原ではこの納屋の片側の壁を取り払い、舟屋としています。
【3】あたりには牡蠣の貝殻が散らばり、ところどころで山積みになっていました。

七尾市の特産品が能登牡蠣。栄養価の高い雪融け水が海に注ぐ春先以降、出荷のピークを迎えます。能登牡蠣は七尾西湾のほぼ全域で養殖されていますが、養殖イカダと沿岸部との有機的な連携が色濃く見られる場所が奥原です。


湾岸に大きめの小屋が並ぶ奥原の光景

瓦屋根の小屋が3棟並ぶ

奥原は江戸時代には、ダイコンやレンコンの名産地として知られていました。ここで牡蠣養殖が始められたのは明治中期のことで、大正期に生産量を延ばし、戦後の農業衰退にともなって一躍主要産業となりました。

奥原では牡蠣の殻むきなどの作業を行う小屋の片側、もしくは両側に庇を出し、そこを舟屋としています。この船に乗ってイカダへ行き、水揚げした牡蠣を持ち帰ると、すぐにその場で殻むきができるという、非常に作業効率のよい配置となっています。


納屋の片側を舟屋とするものが多い


柱は海中に建てられている

七尾市といえば能登を代表する観光地の和倉温泉があり、ここ奥原にも温泉旅館の従業員寮などが建てられましたが、それでも伝統的な漁村風景はしっかりと残されているのです。


専用の舟屋。アプローチは雁行型


【住所】石川県七尾市奥原
【地図】トップ写真の撮影地点
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(17)石川県』角川書店、1981年
『舟小屋 風土とかたち』神崎宣武・中村茂樹・畔柳昭雄・渡邉裕之著、INAX BOOKLET、2007年

2014年5月4日撮影


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