観音町
かんのんまち

視線をさえぎる大暖簾

観音町はひがし茶屋街に隣接する町で、観音院の門前にあることから名付けられました。平入りの商家が軒を連ね、茶屋街とは趣を異にした町並みを見ることができます。

【1】一直線の道の両側に2階建ての商家が並びます。2階の袖壁は下が水平材で支えられ、1階の軒との間に隙間ができます。北陸に特徴的な造作です。
【2】側壁に丸窓がありました。茶屋街の流れを汲むデザインでしょうか。
【3】金沢では長さ1メートルほどの大暖簾を掛ける商家が見られます。通りから店内の様子をのぞかれないようにするためだそうです。

観音町は「卯辰山山麓」として国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されていますが、山麓の寺院群とは異なる町並みを見せるため、別項目を立ててご紹介します。
この町のシンボルが、町名の由来にもなった観音院。歴史は卯辰山の寺院群よりも古く、慶長6(1601)年に2代藩主・前田利長が造営した観音堂と山王社に由来します。元和2(1616)年には門前の道が拡幅され、現在の町の原型が整えられました。


観音院参道から見た町並み


観音町の町家群

以来、観音町は門前町として栄えました。現在でも江戸時代にさかのぼる商家が残されています。現存する建物の半数は戦前のものだそうです。

商家の中には白地に筆文字で屋号や商品を染め抜いた大暖簾をもつものもあります。実はこれ、お店の広告塔であると同時に、表から店内の様子をのぞかれないようにするためのものだそうです。


柴原味噌醤油店


ひがし茶屋休憩館のミセ

ひがし茶屋休憩館は幕末の建物を再生した観光施設。間口4間のうち3間は板戸が蔀戸(しとみど)になっていて、開放的な町家の様子がよく分かります。

ひがし茶屋休憩館(左)と正田家住宅


丸窓が独特な中条酒店

なお、観音町の南に隣接して武家町の御歩町(おかちまち)があります。ここは歩士(かち)と呼ばれた下級武士の集住地区で、いまも土塀の武家屋敷が残されています。ごく狭い地域に寺町、商人町、茶屋街、武家町が隣り合って現存しているところに、金沢の町並みのすごさを感じます。


御歩町の町並み


【住所】石川県金沢市東山1丁目
【地図】トップ写真の撮影地点
【公開施設】ひがし茶屋休憩館
【参考資料】
『金沢市卯辰山山麓寺院群区域伝統的建造物群保存対策調査報告書』金沢市、2006年

2007年4月30日、15年2月16日撮影


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