岩車
いわぐるま

石垣の舟屋

大小の入り江が続く七尾北湾にある漁村のひとつが岩車。北陸特有の切妻造りの民家が連なり、各家の裏手には小さな舟屋が設けられています。

【1】七尾北湾に面して舟屋が点在。つくりは簡素ですが、このように瓦で屋根を葺いたものもありました。
【2】波の穏やかな七尾湾ですが、冬になると西から風が吹きつけるため、石垣を築いて土台を固めています。
【3】集落には板張りや真壁の民家が軒を連ねています。

岩車は古くは農村でしたが、海を間近にした土地ゆえ水害や塩害に悩まされ、副業として塩焼きや漁なども営んできました。
いまも集落全域で比較的大きな畑が見られ、半農半漁の生活が続けられているようです。

岩車では江戸時代には廻船業が営まれたそうです。明治時代には当地の新田家の船が、能登半島を迂回してはるか福浦港(現志賀町)まで入港していた記録があります。
現在の岩車には妻入りの大型民家が連なっていましたが、廻船問屋を思わせる遺構は見あたりませんでした。

家々は集落を走る道と海との間に建てられています。あたかも商家町のように切妻の家が並び、それぞれの敷地は「うなぎの寝床」のように細長く、いちばん海寄りに舟小屋が建てられています。


各家の敷地の一番奥に舟小屋がある


石垣の護岸をもつ船小屋

舟小屋は切妻または片流れ屋根の、とても簡素な姿です。変わっているのは、石垣で護岸が整備されていること。岩車のある穴水湾は波穏やかな入り江ですが、冬になると西風が吹き寄せます。その風や波から岸や小屋を守るため、こうした措置を施しているのだそうです。


【住所】石川県鳳珠郡穴水町岩車
【地図】トップ写真の撮影地点
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(17)石川県』角川書店、1981年
『舟小屋 風土とかたち』神崎宣武・中村茂樹・畔柳昭雄・渡邉裕之著、INAX BOOKLET、2007年

2014年5月4日撮影


戻る