ひがし

京と渡り合う繊細さ

ひがし茶屋街は歴史都市・金沢でも有数の古い町並み。繊細な茶屋建築が居並ぶ光景は見事というほかありません。

【1】階高のある木造建築が並んでいます。茶屋建築は江戸時代から本2階建てでつくられ、2階に客間が置かれました。
【2】雨戸は上部にガラスを入れた高窓雨戸とするものが多いようです。
【3】1階正面には目の細かい格子を入れます。キムスコ(木虫籠)と呼ばれます。


2階の雨戸の隙間から欄干が見える。箔座ひかり蔵

ひがしは文政3(1820)年に開設認可された茶屋街で、いまも6〜7軒の料亭が営業を続けています。茶屋街は日本の「古い町並み」の中でも独特な地位を占めています。本2階の建物が並び(これは宿場町にも共通する特徴ですが)、2階には欄干を設け、色っぽい空間演出に欠かせない弁柄(べんがら)で塗装されています。

弁柄が塗り直されたばかりの家

ひがしに関しては「映画のセットのようで、いかにも『つくりもの』に見えるのが残念」という声も聞きますが、そもそも茶屋街は日常を忘れるエンターテインメント空間なのですから、それでいいのではないでしょうか。
とにかく江戸時代にさかのぼる茶屋建築がこれほど軒を連ねているというだけで、特筆に価する町並みです。


かつて一番町と呼ばれたメインストリート


一番町の1本北の二番町


階高の高い茶屋建築。O家住宅

わたしがひがしを訪れていちばん驚いたのが、格子の造作。幅1センチほどの細い格子が、数ミリ間隔でびっしり並んでいます。中には丁寧に面取りされたものもありました。こうした家が隣にも、そのまた隣にも並んでいるのです。これほど繊細な意匠をもつ町家群は、日本では京都でしか見られないと思っていたわたしはカルチャーショックを受けました。以来ことあるごとに、「京都に張り合えるのは金沢だけ」と言い続けています。


「銀杏面」のかたちに面取りされた格子。ぎゃらりー久連波

驚くほど目の細かい格子。茶房素心

格子の上に欄間を入れる。懐華楼


フレームのみの雨戸袋も散見される。O家住宅


【住所】石川県金沢市東山1丁目
【地図】トップ写真の撮影地点
【公開施設】志摩、お茶屋文化館(旧中屋)
【参考資料】
『金沢市東山ひがし伝統的建造物群保存対策調査報告書』金沢市、2001年

2007年4月30日、15年2月16日撮影


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