東岩瀬
ひがしいわせ

スムシコという仕掛け

神通川河口部に位置する東岩瀬は、富山の外港として、とくに北前船の寄港地として大いに賑わいました。財をなした商家が連なる町並みを特徴付けるのが、1階出格子にはめられた竹すだれの「スムシコ」です。

【1】町家の1階には出格子があります。非常に目の粗い格子で、桟の間隔は15センチもあります。
【2】出格子にはスムシコ(簀虫籠)と呼ばれる竹すだれをはめています。ご覧のように、家の内側からは通りの様子がよく見えますが、外からは中が見えません。風通しもよく、夏に過ごしやすい家となっています。
【3】向かいの町家に見えるように、2階には縦格子窓を入れるのが一般的です。

物資集散の拠点として多くの廻船問屋が居を構えた東岩瀬では、メインストリートに沿って、いまも商家がたくさん残ります。その多くが道の西側、つまり神通川岸に軒を連ねています。


東岩瀬の町並み

スムシコをはめた家。大戸もいい感じ

東岩瀬の町並みの特徴がスムシコ。出格子に竹すだれをはめた構造で、プライバシーの保護に役立つ建具です。竹すだれは、幅7〜8ミリ程度に割った竹を、3〜4ミリ間隔で水平に並べてつくられました。
重要文化財・森家住宅の解説員の方は「富山の中でも東岩瀬でしか見られない」とおっしゃっていました。でも、同じ富山県の滑川(なめりかわ)や、高岡市の伏木地区でも見かけたけどなぁ……。
それはともかく、スムシコは竹の外皮が家の内側に向くようにしているため、室内から外の様子をうかがえるけれど、外から中は見えない構造となっています。


家の中からは外が見えるが


外からは中の様子をうかがえない

また、森家住宅の方は、「スムシコは横向きの格子なんです。東岩瀬の町並みは、1階が横格子、2階が縦格子になっています」とも解説されていました。
確かにスムシコは横向きに走っていますが、「格子」といった場合には、15センチ間隔で並ぶ縦の桟を指すと思います。でもまあ、観光的には「全国唯一の横格子」と言ったほうがインパクトがありますよね。


森家住宅

森家のオエの変則15畳

その森家住宅は、1878(明治11)年ごろに建てられた2階建ての商家で、トオリニワ(土間)に沿って3列に部屋を配した巨大な建造物です。
トオリニワに面したオイ(居間)は15畳もの大空間ですが、畳の敷き方が変わっています。「模様畳」といい、中央の3枚は小川の見立てで、奥の細長い畳は「商売繁盛(半畳)」をかけたものだそうです。
ほかにもトオリニワの舗装として使われた大きな一枚岩や、庭に面したガラス戸など、森家住宅には見どころがたくさんあります。


庭のガラス戸。角に柱がない


土蔵の扉には見事な鏝絵(こてえ)が施されている


【住所】富山県富山市東岩瀬町
【地図】北前船廻船問屋「森家」
【公開施設】北前船廻船問屋「森家」

2014年5月2日撮影


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