相倉
あいのくら

合掌造りの多様性

庄川左岸の丘陵地帯、川面から150メートルほどの高台に相倉集落はあります。屋根が地面着いた「原始合掌造り」から、2階を居住空間として改造したものまで、ここではさまざまな合掌造りが見られます。

【1】60度近い急勾配の屋根をもつ合掌造りの家。相倉を含む五箇山地方では妻面に下屋を降ろします。
【2】壁がなく、屋根が地面に接している「原始合掌造り」。いまは納屋として使われていますが、教科書で見た竪穴住居そのものですね。
【3】屋根を切り上げ、2階を居住空間に改造した家もあります。

南北500メートル、東西200メートルの平坦地に広がる相倉には、合掌造りの民家が20棟残されています。こうした合掌民家は、庄川上流部の富山・岐阜県境付近でしか見ることができません。日本の民家の中では異質な形態であり、合掌集落は「日本の原風景」というより、むしろ「際立って特殊な風景」ということができます。


合掌造りの家が連なる

屋根に開けられた大きな煙抜き

同じ合掌造りでも、富山県の五箇山地方と、岐阜県の白川郷地方とでは、外観に多少の違いがあります。
たとえば、五箇山の家は多くが妻入りで、妻面には下屋を出し、このため入母屋屋根のように見えます。(白川郷では基本的に平入りで、下屋はありません)。
また、屋根の片側に煙抜きをもつのも五箇山の特徴ですが、これによって屋根の水はけが悪くなり、茅の葺き替えサイクルを短くしなくてはならないという欠点があります。

相倉集落で特筆されるのが、集落中ほどにある原始合掌造り。壁がなく、地面に直接屋根を載せただけの姿です。いつごろ建てられたものか定かではありませんが、よくぞこの形態を継承してくれていると思います。


地面に屋根が着いている

納屋として使われている原始合掌造り

真壁造りは集落の南部に多い

ところで相倉は合掌造りの里として知られていますが、訪ねてびっくり、良質な真壁造りの民家もたくさん残っていました。合掌民家と真壁民家が競演する集落は全国でもここにしかなく、非常に見応えがありました。


冬の相倉集落


田んぼの石垣、遠景の山並みと調和する集落景観


【住所】富山県南砺市相倉
【地図】相倉合掌造り集落
【公開施設】相倉民俗館

2003年3月5日、14年5月3日撮影


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