関内
かんない

塔の競演

安政6(1859)年の開港以来、現在に至るまで「横浜の中の横浜」であり続ける関内。数々の歴史的建造物が残りますが、中でも有名なのが3基の塔です。

【1】開発が進んでも、三塔を一望できる場所は残っています。このスリムな赤レンガ塔は横浜市開港記念会館の「ジャックの塔」。
【2】優美なドームをいただく横浜税関の「クイーンの塔」。エキゾチックなイスラム風建築です。
【3】スクラッチタイルに覆われた神奈川県庁本庁舎の「キングの塔」。

関内はJR根岸線の関内駅から石川町駅にかけての北東一帯を指す地名。幕末の開港以後、海外との交易の場として整備され、取り締まりのため周囲は堀で囲まれました。出入口は現在の関内駅東側に架けられた橋(吉田橋)のみで、そこに設けられた関所より内側に位置したことから「関内」の通称が生まれました。


関内は近代建築の宝庫。3階建てのビルが並ぶ一角

横浜開港資料館

関内は東半分が外国人居留地、西半分が日本人居留地とされました。現在の狭義の関内は後者で、中華街を含む東側は「山下町」となっています。
居留地制度の廃止以降、関内の町並みは大きく変貌しましたが、旧日本人街では大正〜昭和初期に建てられた行政・公共建築やオフィスビルを見ることができます。

関内の近代建築を代表するのが、戦前に外国人船乗りの間で「ジャック、クイーン、キング」と呼ばれた三塔です。
ジャックの塔は横浜市開港記念会館(旧開港記念横浜会館)の高塔。1917(大正6)年、横浜開港50周年を記念して建てられた施設で、赤レンガと花崗岩が美しい縞模様を描いています。


スリムなジャックの塔。建物左端に八角ドーム、右端に四角ドームがある

横浜税関のクイーンの塔

クイーンの塔は横浜税関本関庁舎。小さなアーチ窓を並べた建物の上にイスラム風のデザインでそびえ、ひときわ目をひきます。完成は1934(昭和9)年。

キングの塔は神奈川県庁本庁。幾何学装飾が印象的な建物で、エキゾチックな雰囲気を漂わせています。完成は1928(昭和3)年。外壁全体をスクラッチタイルで覆い、独特の陰影をもっています。


キングの塔をいただく神奈川県庁本庁舎

神奈川県庁本庁舎1階ホール

神奈川県庁は高塀もスクラッチタイル張り。すごい!

 


横浜地方・簡易裁判所。1930(昭和5)年の旧建築を残して増築

関内の大型近代建築は、三塔をはじめ今も創建当初の目的のままに使われているものがある一方、解体されたり、ファサード(外壁)のみ保存されたものもあります。
それでも都心部に多数の近代建築が残されているのは驚嘆すべきことでしょう。

本来の役目を終え、第二の人生を歩む近代建築もあります。その筆頭が赤レンガ倉庫。1911(明治44)〜13(大正2)年に建てられた2棟の倉庫で、耐震補強後の2002年に、文化・商業施設としてオープンしました。いまや人気アーティストのイベントも開催されるなど、横浜を代表する観光名所となっています。
赤レンガ倉庫2号倉庫

横浜郵船ビル。1936(昭和11)年築

左:旧横浜市外電話局、右:旧横浜商工奨励館


【住所】神奈川県横浜市中区新港1丁目、海岸通1〜3丁目、元浜町1〜3丁目、北仲通1〜3丁目、本町1〜3丁目、南仲通1〜3丁目、日本大通ほか
【公開施設】横浜市開港記念会館(旧開港記念横浜会館)、横浜郵船ビル(日本郵船歴史博物館)、横浜税関本関庁舎、赤レンガ倉庫、横浜開港資料館、旧横浜市外電話局(横浜市発展記念館)

2007年6月24日、14年10月14日撮


戻る