金井島
かないじま

最も足柄らしい里

神奈川県西部の足柄平野は水の豊富な稲作地帯。平野の北に位置する金井島もそのひとつで、のどかな里の風景が広がっています。

【1】金井島は水の里。集落いっぱいに水路が張りめぐらされ、生活用水や農業用水として使われました。ここに水路が走っています。
【2】金井島は緑の里でもあります。畑の背後にぽつぽつと屋敷林が浮かび上がり、のどかな風景をつくり出しています。
【3】主屋に直交するように蔵や納屋を一列に並べ、それぞれを渡り廊下で接続した家を多く見かけました。このあたりの伝統的なやり方なのでしょうか。

足柄平野は酒匂(さかわ)川の下流域に形成された沖積平野。その“首都”である小田原は戦国時代から城下町として栄え、江戸時代には東海道最大の宿場町として発展しました。しかし、そんな中央から一歩離れたところには、豊かな水に支えられた稲作地帯が広がっていたのです。


穏やかな山並みに見守られた足柄の景観。富士山ものぞく(延沢)

あしがり郷瀬戸屋敷(金井島)

開成町北部の金井島周辺は足柄平野の古民家密集地帯のひとつ。散策の起点になるのが「あしがり郷瀬戸屋敷」(旧瀬戸家住宅)です。宝永4(1707)年の富士山噴火後に建てられたといいますから、築およそ300年になるのですね。

瀬戸家は当地で庄屋を務めた家で、神奈川県に現存する民家としては有数の規模を誇ります。簡素な棟飾りや屋根を葺き下ろした土庇(どびさし)をもつなど、関東地方に特有の素朴な農家建築ですが、正面に式台を構えるなど、庄屋屋敷としての風格もそなえています。
主屋の背後には明治20年代に建てられたと推定される土蔵があります。こちらも間口10間という規格外の大きさです。


瀬戸屋敷の囲炉裏にはヒアマがある(金井島)


米蔵として使われた瀬戸屋敷の土蔵(金井島)


箱棟を載せた茅葺き民家(金井島)

瀬戸屋敷の周辺には数軒の茅葺き民家が現存しています。水路がめぐる屋敷林の中や、広々とした水田地帯の片隅に茅葺き民家が建つさまは、とても足柄らしい風景だと思います。

屋敷林の中の古民家(延沢)


屋根はもちろん、表構えもきれいな民家(岡野)


茅葺きのほかにも古い家が多く残されている(延沢)

関東地方では珍しい茅葺きの薬医門(金井島)


【住所】神奈川県足柄上郡開成町金井島、延沢、岡野
【公開施設】あしがり郷瀬戸屋敷

2013年11月23日撮


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