小山町
こやまちょう

下町風味の山の手

慶應義塾のお膝元、三田。その北の外れ、古川の岸辺に、旧三田小山町はあります。路地裏に木造家屋が連なる町並みですが、2014年6月に再開発事業の概要が発表されました。この風情ある町並みも、じきに消えます。

【1】何と出桁(だしげた)造りの銭湯がありました。小山湯、1921(大正10)年築、2007年廃業。
【2】下町のような町並みですが、路地の先には階段が。ここは台地の周縁に位置する、れっきとした「山の手」なのです。
【3】周囲には新しい住宅やビルが林立。小山町の北西の一画だけが昭和の香りを漂わせています。

現在の住所でいう港区三田1丁目の5番地から13番地は、かつて三田小山町という町名でした。古川を挟んで麻布十番の対岸にあるここは、港区では数少ない昭和の香り漂う町。慶應義塾大学に近いことから下宿屋も建てられたそうで、木造長屋や銭湯が連なる町並みに当時の名残を感じます。


出桁造りの小山湯

町のほぼ中央にある小山湯は大正時代の建設。東京の銭湯というと、千鳥破風や唐破風で仰々しく入口を飾るものですが、小山湯は珍しく出桁造りの町家風です。
ここから北へ進むと商店街に出ます。精肉店、惣菜店、クリーニング店などが軒を連ねる昔のままの商店街で、あたりには木造の二軒長屋が多数残されています。


下屋庇の上にバルコニーを設けた家が多い

その町並みは一見すると下町そのもの。しかしよく見ると“山の手らしさ”も潜んでいます。たとえば、路地裏の勝手口に置かれた沓脱石(くつぬぎいし)は、下町ではあまりお目にかかれません。瓶ケースを無造作にひっくり返して使うのが下町流ですが、さすがは山の手、お上品ですね。
また、町の中央部を東西方向に崖が走っているため、坂道が見られるのも特徴。町並みが垂直方向に変化するのも山の手ならではです。


勝手口には沓脱石がある


路地の奥には再開発された高層ビルが

町並みを撮影していて気になるのが、背後に迫る高層マンション群。これらも小山町内にあり、2009〜10年にかけて完成しました。
わたしが初めて小山町を歩いたのは2001年。それから13年ぶりの再訪となった今回、かつて見た長屋群や下宿屋のほとんどが消滅していました。
現在、古川の岸辺の一画にかろうじて昭和の町並みが残っています。しかし2014年6月、小山町で最後に取り残されたエリアの再開発事業が発表されました。港区に奇跡的に残された町並みも、いよいよ姿を消そうとしています。


小山町の中心にある無名の階段。画面中央が小山湯


1階正面の建具がいい感じ


【住所】東京都港区三田1丁目
【公開施設】なし

2014年6月19日撮


戻る