野田
の だ

醤油の香りに誘われて

野田といえば醤油です。その製造は室町時代にさかのぼり、江戸川に面した地の利を生かして、江戸時代以降飛躍的に発展しました。

【1】野田には醤油製造に供した歴史建築が点在しています。これはキッコーマン給水所。
【2】醤油醸造で財をなした豪邸が見られるのも野田の特徴です。こちらはキッコーマンの経営にも携わった茂木七郎治の邸宅。長屋門が威容を誇ります。
【3】ちなみに茂木七郎治邸は安政5(1858)年ごろに建てられた、現存する野田市最古の建築物です。

室町時代に始まった野田の醤油製造は、江戸時代中期以降、江戸の人口増加にともなう需要増を受け飛躍的に伸びました。とりわけ原料となる大豆を搬入し、完成した醤油を輸送しやすい、江戸川のほとりに位置することが有利にはたらきました。
醤油産業の歴史はいまも受け継がれ、市内にはキッコーマン、キノエネ醤油、坂倉味噌醤油などの企業が集まっています。


キッコーマン野田工場。事務所は大正時代の洋風建築


明治〜大正に建てられた社屋と工場を連ねるキノエネ醤油

中でも野田の醤油産業を牽引してきたのがキッコーマン。1917(大正6)年に創業した野田醤油株式会社を前身とし、市内には以後100年の歩みを伝える建築遺産が残されています。
1923(大正12)年の給水所、1924〜25年に建てられた洋風の事務所、それに野田醤油の経営に携わった地主茂木家ゆかりの邸宅群などなど。一連の建造物は、「激しい産地間競争等を通じ近代産業へと発展した利根川流域等の醸造業の歩みを物語る近代化産業遺産群」として、2007年、経済産業省の近代化産業遺産33のひとつに認定されました。


野田の醤油醸造に携わった茂木本家の邸宅とレンガ塀。1926(大正15)年


茂木本家のレンガ塀の先に1908(明治41)年ごろのキッコーマン稲荷蔵がある


安政5(1858)年ごろの茂木七郎治邸


ベンガラ塀が印象的な旧茂木佐平治邸(市民会館)

野田は醤油産業関連の建築物のほか、企業が地域貢献のために建てた施設が多いことも特徴。産業地に欠かせない銀行や市民会館など、戦前に建てられた洋風のコンクリート建築が存在感を放っています。


旧野田商誘銀行(現・千秋社社屋)。1926(大正15)年


1929(昭和4)年築の興風会館。当時の千葉県で県庁に次ぐ大建築だった


古い商家も多く残る


【住所】千葉県野田市野田、清水
【公開施設】旧茂木佐平治家(野田市市民会館)、興風会館、キッコーマン野田工場御用蔵
【参考資料】
パンフレット「たてもの散策圖繪(MAP) 近代化産業遺産のまち―野田」

2013年12月7日撮


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