長南
ちょうなん

半島の要

房総半島のほぼ中央に位置する長南は、中世より城下町・宿場町として栄えました。近代に入り隣の茂原市の開発が進むと、対照的に古い家並みが残され、今日に至っています。

【1】平入りの商家が点々と残る、歴史的な景観が見られます。
【2】商家はみな、庇を大きく突き出しています。江戸を中心とする関東地方の典型的な造作です。
【3】通りに面した商店の裏に平屋を建て、居住空間とします。全国で広く見られるつくりで、長南の商家はどれもこのタイプです。

長南町は中世に武田氏の城下町として栄え、江戸時代には房州往還中街道に沿った宿場町として賑わいました。「房総の小江戸」と呼ばれた大多喜や、九十九里海岸の一宮へ向かう旅人が往来し、道沿いには旅籠、居酒屋、飛脚屋のほか、米穀、油、染物などを扱う商店が居並びました。


珍しい色をした蔵造りの商家


国登録文化財、いせや星野薬局

そのうちの一軒、伊勢屋は元禄年間(1688〜1704年)に伊勢より当地へ移転し、医院・薬屋として開業したお店。以来300年間、同じ場所で営業を続けています(現在の屋号はいせや星野薬局)。
現在の店舗は文化2(1805)年に建てられた豪壮なつくり。長南では珍しい妻入りの建物で、町並みでひときわ目立っています。

町並みのところどころには、トタンで覆われた茅葺きの家も見られます。右の1軒は屋根がかぶと造りになっていますが、平側をかぶと造りとするのは珍しいですね。
長南にはほかにも由緒の気になる旧家がたくさんありましたが、これまで古民家の悉皆調査などは行われていないようです。宿場町として賑わった江戸期の面影を残す町並みについて調査が行われ、未来に向けて継承されていくことを願っています。


町並みの北にあった寄棟平入りのかぶと造り民家


本2階建ての商家が2軒並んでいた。裏手に居室部が伸びる


町並みの北の入口付近。大きくカーブを切るところにも茅葺きの家がある


【住所】千葉県長生郡長南町長南
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(12)千葉県』角川書店、1984年

2010年5月22日撮影


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