安馬谷
あんばや

緑色の衝立

イヌマキの防風生垣は房総半島の集落の原風景。安馬谷では高さ3メートルもの生垣がまるで衝立のように連なり、敷地内の家をすっぽり覆い隠しています。

【1】千葉県に自生するイヌマキは根元近くから葉が密に付くことから、防風生垣として好まれました。
【2】安馬谷の生垣ですごいのが高さ。2.5〜3メートルほどになり、中の家は大棟しか見えません。
【3】庭木にもイヌマキが植えられ、家ごとに凝った剪定が施されています。

千葉県の九十九里平野や安房地方の沿岸部では、イヌマキの生垣が続く町並みが形成されています。これらのうち南房総市の多田良(ただら)と安馬谷は「イヌマキの生垣集落」として、文化庁による文化的景観の予備調査が行われました。


国道沿いの生垣


路地裏の生垣。高さは3メートルありそう

安馬谷では国道410号線の両側に見事なイヌマキの生垣がつくられ、それが路地裏まで続いています。この地域では明治時代からイヌマキを生垣とする習慣がありました。根元近くから葉が密に茂るイヌマキには防風・防火・防砂・防寒などの効果があるうえ、もともと千葉県に自生する植物のため病気になりにくく、よく茂ります。


特徴的な刈り込みをもつ家
安馬谷でイヌマキの植栽が普及したのは第二次世界大戦後のこと。家の建て替えに合わせ、新たに生垣を設けるようになったそうです。いまも集落には、そのころ建設されたと思われるツシ2階建ての古い農家が多く残されています。そうした甍の古民家が、生垣を刈り込んだ入口からのぞく光景は、とても美しいものでした。


安馬谷の路地。右の建物は牛舎


端正な寄棟の農家


生垣と甍の波がリズムを刻む


【住所】千葉県南房総市安馬谷
【公開施設】なし
【参考資料】
『日本の文化的景観』文化庁文化財部記念物課監修、同成社、2005年

2014年4月10日撮


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