矢那瀬
やなせ
山すそに茅屋根と高窓
養蚕が盛んな土地だった旧野上町の中でも、とくにたくさんの養蚕農家を残すのが矢那瀬です。 |
【1】このあたりで見られる直方体の2階屋は、ほぼ例外なく養蚕農家として建てられたとみて間違いないでしょう。 |
矢那瀬は大きく蛇行して流れる荒川沿いの河岸段丘に位置する集落。地名は荒川の流れの速さを「矢の瀬」と表現したことにちなむともいわれています。かつて荒川に沿って秩父往還道が走り、矢那瀬集落には宿駅が置かれました。 |
矢那瀬集落の景観 |
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同時にこのあたりは県内屈指の養蚕地帯でもありました。秩父一帯では江戸期から養蚕が盛んでしたが、明治以降は単に生糸を産するだけでなく、絹織物の生産までを行うようになり、秩父銘仙の産地となったのです。 |
旧野上町で矢那瀬とともに養蚕農家が多いのが西隣の野上下郷。両者を比べると、野上下郷では谷筋の狭い場所に家々が並んでいるのに対し、矢那瀬は山すその平地に展開し、そこに養蚕農家が無数に点在しています。どちらかというと散村に近い景観ですが、高窓をもつものもあれば、茅葺き屋根のものもあり、変化に富んだ家のかたちを楽しめました。 |
矢那瀬では高窓のない養蚕農家のほうが多い |
トタンで覆われていない茅屋根はこの1棟のみ |
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家が散在する「散村」の景観を見せる |
2014年4月2日撮影 |