黒谷
くろや

切り落とされた屋根の不思議

秩父鉄道の和銅黒谷駅前が、秩父市指定有形文化財・内田家住宅のある黒谷の里。新興住宅が進出する中に、内田家ともう1軒の茅屋根が残されていました。

【1】屋根を切り落とした部分に窓を開けます。蚕室とした2階の明かり取りと通風孔を兼ねた窓です。
【2】妻面の頂部が上に向かって鋭く延びあがるのは、武蔵の山間部の特徴です。
【3】この内田家住宅は17世紀前半の建築とされますが、外壁のところどころに筋交い(すじかい=斜め材)が入れられています。筋交いは一部の例外を除き、日本の伝統建築にはない工法ですが……? 後代の補強なのでしょうか。

奈良時代、銅銭の和同開珎の原料になった銅を産した和銅遺跡にほど近い黒谷に、2軒の茅葺き民家が残されています。このうちの1軒が当地の庄屋を務めた内田家住宅。間口8間、2階建ての大型養蚕農家です。


内田家住宅

内田家住宅

内田家の付属屋。門を兼ねた納屋か

山梨・埼玉・東京の山間部には、2階の蚕室の窓を確保するため、屋根を切り落とした「かぶと造り」の家が散在しています。内田家もかぶと造りですが、後代に増築したのか妻側にせり出した部分があり、複雑な外観をしています。外壁に筋交いを多用するのも、日本建築ではきわめて珍しいことだと思います。

内田家住宅から木立を挟んだ場所に、もう1軒の茅葺き民家があります。こちらは間口6軒と中くらいの大きさの平屋。空き家のようですが軒下にはトウモロコシが吊り下げられて、納屋として使われている様子でした。


もう1軒の茅葺き民家


内田家の向かいにあった古い工場建築


100メートルほど隔てて2軒の茅葺き民家が建つ。手前が内田家


【住所】埼玉県秩父市黒谷
【公開施設】なし

2010年4月24日撮


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