楚部穴
そべあな

主屋は間口10間以上

沢渡(さわたり)川の両岸に広がる下市萱は、川沿いの耕地と、杉を植林した産地からなる小さな里です。地区最西端の楚部穴集落には、大きな主屋と蔵を配したのどかな景観が残っています。

【1】田んぼを囲む裏山に杉林が広がっています。このあたりはかつて林業で栄えた土地ですが、いまは営まれていません。
【2】楚部穴には立派な主屋がたくさん。多くは寄棟造りで、両端がかぶと造りになっています。間口はどれも10間以上。
【3】主屋の前に蔵を並べています。土蔵のほか、福島南部に多い石蔵も見られます。

楚部穴のある下市萱周辺は、かつて杉の一大産地として栄えました。この地の杉は沢渡杉として知られ、30年ほどで大きくなる成長の早さが売りでした。しかしそのぶん目が粗く、すぐに廃れたようです。
林業最盛期に建てられたものなのか、楚部穴には間口の広い大型農家がたくさん残っていました。お住まいの方が「間口10間じゃ利かないねぇ!」というほどの巨大さ。いまはすべてトタン葺きですが、茅葺きだったころを想像するだけでも心躍る、見事な集落景観です。


主屋の前に蔵が建つため全体が見えないが、この家は間口12間はありそう


通りに沿って並ぶ蔵。浜通りから中通りにかけてよく見られる建築配置だ


主屋に直行して付属屋を建てている


集落の最奥の家


集落南部にはかぶと造りは少ない


【住所】
福島県いわき市三和町下市萱
【公開施設】なし

2013年6月1日撮影


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