昭和村
しょうわむら

これぞ里山

どこからアプローチしても峠越えをしなくてはたどり着けない山あいの里、昭和村。本州で唯一、カラムシを栽培し続ける地域であり、その繊維を使った「からむし織」で知られます。古い家は村の中心部から南西部にかけて比較的多く残っています。

【1】昭和村の中心部、佐倉(さぐら)の風景。会津地方に多く見られるL字平面の中門造りが点在しています。
【2】佐倉では中門造りとともに直家(すごや)も多く見られました。入口には玄関ポーチが付いています。ポーチは冬の間、屋根から落ちる雪や衣服に付いた雪が室内に入り、土間がぬかるむのを防ぎます。
【3】佐倉の見事な「里山感」を演出しているのが、背後にそびえる大仏山。これで家並みが茅葺きだったら、言うことなしなんだけどなぁ……。

昭和村は1927(昭和2)年、大芦村と野尻村が合併して生まれました。改元されたばかりの年号を採用するとは、いかにも安直で好めませんが、見方を変えれば、いまとなっては古くなってしまった自治体名によって「懐かしい風景に出合えそう」という期待感をもたせてくれると、言えなくもありません。


妻面に見事な梁組みを見せる(佐倉地区)


主屋と蔵、耕作地と森が調和した光景(佐倉地区)

昭和村に合併した旧大芦村は、古くからカラムシ生産の盛んな土地でした。カラムシはイラクサ科の多年草で、応永年間(1394〜1428年)のはじめごろには当地で栽培されていたといいます。
収穫したカラムシの繊維は青苧(あおそ)と呼ばれ、新潟へ出荷されて伝統工芸品の越後上布(えちごじょうふ)や小千谷縮(おぢやちぢみ)の原料になりました。ちなみに原料生産地である昭和村でも、カラムシ織りは行われています。

昭和村はいまでもカラムシを生産し続けており、本州においては唯一の生産地となっています。カラムシ畑は村内各地にあるのですが、あいにく訪れた10月は刈り取り後で、家々とカラムシが一体化した風景を見ることができませんでした。
いずれ機会をつくって、「カラムシ焼き」(発芽・生長を揃えるため5月に行われる焼畑)や刈り取り(7〜8月)の季節に再訪したいと思います。


玄関ポーチをもつ直家(すごや)の家並み(佐倉地区)


屋根をかぶと造りにした家もあった(大芦・中坪地区)


茅葺きの家があったが、かなり傾いていた(大芦・開場地区)


【住所】
福島県大沼郡昭和村
【公開施設】なし
【参考資料】
『民家の画帖』川島宙次著、相模書房、1981年
観光パンフレット「昭和村」昭和村役場産業建設課、制作年不明

2013年10月20日訪問


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