さかい

中門造りは水に映えて

伊南郷(いなごう)と伊北郷(いほうごう)の境界だったという界には、南会津最多の15棟もの中門造りが残されています。

【1】界の中門造りは、屋根がトタンに替わっていることに加え、外壁にも改装の手が加えられています。しかしこの家は比較的保存状態がよく、昔のままに真壁をあらわにしています。
【2】蔵は会津地方に多い二重屋根です。
【3】界のあちこちで見かけたのが、7〜8坪の池。ほとんどの家にそなえつけられています。放された鯉は観賞用か、あるいは食用でしょうか。

東へ、西へと大きく進路を変えて流れる奥会津の母なる川、伊南川。河岸段丘がなく、両岸には広大な平野が広がり、そこに数々の集落や耕作地が営まれてきました。
界は北流してきた伊南川が西へ進路を変える場所にあります。ここはまた、伊南川に鹿水(かなみず)川が合流する地点であり、陸上交通では沼田街道と昭和村へ至る鳥居峠越えの道が分岐する場所でもあります。


かぶと造りになっている中門造りの農家


屋根を切り上げて2階建てに改築したと思われる家

南会津は、L字型平面の中門造りと呼ばれる農家が多い土地。中でも茅葺きの家が多く残る前沢集落は、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。
ここ界には、前沢をしのぐ15棟の中門造りが残され、数のうえでは南会津最大の中門造りの集落といえます。

界ではすべての家がトタンで修復され、茅屋根の民家は現存しません。それでも、これだけの数の中門造りが残っていることは特筆に価します。また、山村である前沢に比べ、界は街道集落であるため、道に沿って中門造りの大型農家が点在し、独特の風景をつくりあげています。


ほとんどの家の庭に池がつくられている


中門造りを改装した花泉酒造

界ではそれぞれの家に池がつくられています。冬に雪を捨てる消雪池かと思いましたが、鯉を放している池もあったので、防火水槽なのかもしれません。


L字の両辺が非常に長い家


これほど大きな池もあった


【住所】福島県南会津郡南会津町界

【公開施設】なし
【参考資料】
『前沢曲家集落保存対策調査報告書』福島県南会津町、2010年
『角川日本地名大辞典(7)福島県』角川書店、1981年

2013年6月9日撮影


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