大内
おおうち

「良くも悪くも大内」

大内宿は、会津若松から日光へ抜ける会津西街道(日光街道)の宿場町。福島県内で最もよく保存された宿場町であり、かつ、茅葺きの宿場町としては全国で最大規模のものです。

【1】江戸時代の決まりで、民家はすべて平屋建てとされました。江戸時代は道の片側に24軒、東西合わせて48軒の家があったそうです。
【2】道路と家の間に、幅5メートルほどの空間があります。「オモテ」と呼ばれ、馬をつないだり、荷物を積み下ろしするために使われました。
【3】街道は砂利道です。1999年度の用水路の発掘調査を機に、昔ながらの砂利道に戻されました。住民からは「ほこりがひどい」と苦情が出ましたが、観光客に好評だったのと、「人間道路会議の大賞」を受賞したことで、徐々に受け入れられました。
【4】街道の両側に用水が流れています。もともと街道の中央を流れていた水路を1886(明治19)年に付け替え、以来、生活用水として使われ続けています。
【5】集落の入口に巨大駐車場があります。駐車台数は普通車で400台!

福島県の山間部に、映画のセットのような茅葺き集落、大内宿があります。
大内宿の住民は昭和50年代以降、古民家を民宿や飲食店として使いながら残す道を選びました。観光ピーアールも積極的に行い、それが奏功して福島県を代表する観光地にまで成長しました。
東日本大震災前の統計ですが、2010年の観光客数は約101万人。同じ会津の喜多方市が、市全体で124万人ですから、驚くべき数です。


各家の前に、かつて馬をつないだ広場(オモテ)がある


道の両側に自然用水が流れている

しかし、たった40戸の集落にこれだけの人が訪れることによって、古き山村としての風情は失われました。集落内に自動販売機こそありませんが、伝統的な生活が失われた集落を指して、南会津界わいでは「良くも悪くも大内」と言われているそうです。言い得て妙だと思います。

大内宿を訪れてまず驚くのは、駐車場の広さかもしれません。集落の入口に、普通車が400台も停まれる広大な駐車場があります。しかし、それでもゴールデンウィークや紅葉シーズンにはさばききれず、国道から大内宿にいたる県道の約4キロは渋滞します。
ここの駐車料金も、集落にとっては大きな収入源。何しろ茅葺き屋根の維持には、莫大なお金がかかるのですから。


自然用水は天然の冷蔵庫。ここで冷やした野菜とラムネが夏の名物

主屋の奥に蔵が建っている。この蔵も茅葺き屋根だ


街道の突き当たりに残るかぶと造りの茅葺き民家


村外れの高倉神社


日が暮れると軒先の行灯に火がともる


【住所】
福島県南会津郡下郷町大内
【公開施設】大内宿町並み展示館(復元)
【参考資料】
『未来へ続く歴史のまちなみ』全国伝統的建造物群保存地区協議会編著・発行、2001年
『美しい日本のふるさと 北海道・東北編』清水安雄監修、産業編集センター、2009年

2013年6月8日、14年9月23日撮影


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