飯坂
いいざか

修景進む温泉地

飯坂は宮城県の秋保(あきう)、鳴子とともに奥州三名湯に数えられた温泉地です。新市街には鉄筋コンクリートの旅館が密集しますが、最古の源泉とされる鯖湖湯周辺には昔ながらの温泉街の風情が残り、近年は修景事業が進んでいます。

【1】信用金庫の看板に「両替商」。こうした修景事業は飯坂旧市街の至るところで進められています。
【2】土蔵造り3階建てのなかむらや旅館。町並みのフォーカル・ポイントです。
【3】飯坂は坂の町。古い家は数えるほどしかありませんが、修景が進めば、歩を進めるごとに景色が変わる坂の町ならではの楽しみも増えそうです。

飯坂温泉は日本武尊の時代にさかのぼる伝説をもち、歴史時代に入ってからも西行や松尾芭蕉などの旅人を癒してきました。当地で最古の温泉とされるのが鯖湖湯。現在の建物は1993年のものですが、木材を多用した伝統的なつくりになっています。
また、鯖湖湯の並びのほりえや旅館も、鉄筋コンクリート造りでありながら外装を板張りとしていますし、2011年に新築なった波来湯(はこゆ)も木造で建設するなど、飯坂では木の香りあふれる新建築が随所に見られます。


旧市街の中心にある鯖湖湯(中央奥)とほりえや旅館(左手前)

なかむらや旅館。左が新館、右が本館
ほりえや旅館のはす向かいに建つなかむらや旅館は、正真正銘の歴史的建造物。本館は江戸時代末期の建物で、旅館として創業した当初の建物と伝えられています。3階建ての最上層を小さくしたのは後代の改築によるものですが、これによって城郭風の外観をもつこととなりました。
本館に直行する新館は1896(明治29)年ごろの建設。同じく土蔵造り3階建てですが、全階が同じ床面積で、本館とは趣を異にしています。
一般公開されている旧堀切邸は、江戸時代から続く豪商の邸宅。主屋は1881(明治14)年に再建されたもので、天井高が3メートルもある座敷や、畳敷きで床の間をもつ蔵など、豪奢なつくりになっています。
旧堀切邸表門と板塀

旧堀切邸主屋の背後に蔵が並ぶ

旧堀切邸で現存最古の十軒蔵。安永4(1775)年築

夜光院坂
飯坂には「町並み」といえるような連続性のある町家群はほとんどありません。しかし、坂道や石段の路地が多く、随所に土蔵や木造住宅が残されていて、散策の楽しい町だと思います。

なまこ壁の土蔵

横町の邸宅

横町の町家群


【住所】福島県福島市飯坂町
【公開施設】旧堀切邸

2010年8月17日、14年5月16日撮影


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