白岩
しらいわ

聖俗の境界

寒河江市街の北西郊外にある白岩は、出羽三山詣での行者が歩いた宿場町。この町より西が出羽三山の聖域とされていました。

【1】かつて出羽三山街道の両側に土蔵造りの商家群がありましたが、ここ20年ほどで激減したようです。
【2】商家は消えても、土蔵はかなりの数が残されていました。
【3】大日如来堂です。白岩の街道筋には、こうした小さなお堂やお宮が点在しています。出羽三山信仰に関係しているのでしょうか。
ちなみに大日如来は三山のひとつ、湯殿山の本地仏です。

白岩は山形県を横断する六十里越街道の通る町。山形城下と鶴岡城下を結ぶこの街道は、庄内の塩を内陸へ運んだほか、出羽三山の参詣道として盛んに利用されました。白岩は江戸時代以降、その宿駅として発展した集落です。
当時、白岩村よりも西は出羽三山の神域と見なされていました。そのため山形から歩いてきた行者は、村境の臥竜橋(がりゅうきょう)脇の茶屋で新しいわらじに履き替えました。


白岩宿の町並み。古い家は数えるほどしかない

街道沿いに土蔵が点在する

白岩村の住民が宿所を営んだのには、往来の多さに加え、土地の貧しさも影響していたようです。貞享4(1687)年には時の代官に宛てて、「当村には田畑が少なく、湯殿山参詣の行人をはじめ通行人の宿所を営み、年貢や夫食(ぶじき=農民の食糧)代金上納の足しにして渡世をしてきた」という訴状が送られています。

現在の白岩には、六十里越街道を踏襲した3本の道が並走しています。ひとつは右へ左へ曲がりながら進む幅4メートルほどの旧街道。ふたつ目は、蛇行する旧街道の真ん中に通された現代の六十里越街道。そして最後が、1999年に開通した白岩バイパスです。


右が旧街道、左が現代の六十里越街道


ところどころに小さなお堂や祠がある

白岩では長らく古い町並みが保持されてきました。しかし白岩バイパスの開通に前後して旧家の建て替えが進んだようで、現在では一部の土蔵などを除き、古い建物はほとんど残されていません。2010年以降も、地区の東側にあった木造旅館のマンジュヤ(漢字は万寿屋でしょうか)が解体されるなど、そのスピードは衰えていません。
山形県内陸部の古い宿場町として期待して訪れただけに、やや残念な探訪となってしまいました。


【住所】山形県寒河江市白岩
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(6)山形県』角川書店、1981年

2014年12月29日撮


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